COSMOS by Collier Schorr

アメリカ人フォトグラファー、コリエ・ショア(Collier Schorr)の作品集。2020年、作者はアーティストであるニコール・アイゼンマン(Nicole Eisenman)を撮影した写真をもとにドローイングを描き始めた。ドッペルゲンガーや、自分の顔を他人の中に見るということの可能性に惹かれ、そこをルーツとした孤独な実践であった。本作は紛れもなく、作者が独自に持つ物語を描くスタイルが成すシークエンスである。見覚えのある場所で演出されたものや率直に思うまま描かれたもの、白紙のページから姿を現したようなものまで、肖像や自撮り、セルフポートレイトを描き幅広く紹介している。


アイゼンマンの10代の娘や、他のアーティストたちも登場し、まばらなもので満たされた世界観を作り出している。ある作品では、批評家・作家であるスーザン・ソンタグ(Susan Sontag)の伝記の表紙が亡霊のように浮かび上がり、ページとページの間で自己を主張するクィアな人物との近さに鑑賞者は不安を覚える。

作者は本ドローイング群に対し、写真について考え、同時に写真から逃避する作品だと考える。写真は常に写真家と被写体との間で制作者の存在が共有されるが、ドローイングは物理的な注意深さと共同作業を別の形をもって描きこんでいる。ドローイングは身体と空間に関わり、写真が持つ「決定的な真実」であるところに曖昧さを生み出す。それは、具体的な設定の喪失やはたまた年齢というものの不在によるものである。クィア文化の多孔的な世界は、写真や絵画の世界よりもはるかに密接に作用するのである。本作は、作品やコミュニティの中でこの2人の人物が、イメージとしてだけでなく、限りある命を持つ人間としても存在し、さまざまな領域に在る様子を探っている。

アートライター兼美術批評家のジェニファー・ヒッギー(Jennifer Higgie)がエッセイを寄稿。

by Collier Schorr

REGULAR PRICE ¥14,300  (tax incl.)

hardcover
92 pages
280 x 355 mm
color, black and white
2024

published by MACK