オランダ人デザイナー、デュラン・ランティンク（Duran Lantink）の作品集。作者は自身の名前を冠したファッションブランド〈Duran Lantink〉のデザイナーとして、2019年には「LVMH PRIZE」のセミファイナリストとしてノミネートされた経験をもつ。本書は、同タイトルの「神話的」なコレクションピースをベースに編集、制作されており、「芸術がいかにして支配的な社会的・政治的言説に挑戦し、破壊することができるか」を示す。本コレクションはデッドストックの品から作られた一点ものであり、マルセル・デュシャン（Marcel Duchamp）による作品「レディメイド」を参照とし、既存の素材から新たな作品を生み出している。

コレクションは100枚以上の写真に記録されているが、一般的にフルカラー印刷で用いる色であるシアン、イエロー、マゼンタのうち、マゼンタが、作者のプリンターのインク切れにより刷られていない。マゼンタが欠けているにもかかわらず、作者は再印刷をしないことに決め、観るものの知覚と戯れるようなイメージ群を作り出した。

作者はアメリカ人アーティストのアンディ・ウォーホル（Andy Warhol）の影響を受けており、その実践の多くを参照とした。ウォーホルのシルクスクリーン印刷は「機械」としてみなされていないが、作品を量産させる手段としてシルクスクリーン印刷を用いていた。ウォーホルはまた、明らかに機械的な美学を堪能しており、「私が見せたいものは機械的である。機械には問題が少ない。私は機械になりたい。」（引用元：デビッド・ブルデン『WARHOL』/ 1989年、Abrams Books）と述べている。