DUSTY DIE by Alicja Kwade
ポーランド人アーティスト、アリシア・クワデ(Alicja Kwade)の作品集。2025年10月から2026年2月にかけてベルギーの「M Leuven」で開催された展覧会に伴い刊行された。
未知が境界ではなく、出発点だとしたら? ベルギーで初めてとなる個展で、作者は、世界を、そして世界を理解しようとする我々の試みを、これまでとは異なるかたちで見るよう誘う。作者は、科学的・哲学的な概念に問いを投げかける彫刻やインスタレーションによって、国際的に評価されている。時間、偶然、重力をめぐる考えを作品へと置き換え、まさにその体系そのものを揺るがしていく。鏡像や反復、日用品や自然素材の解体を通して、作者は私たちの知覚を試し、その境界を解きほぐす。そうして、私たちが知っていると思っていることと、理解からこぼれ落ちるものとのあいだにある断層を浮かび上がらせる。
作者の作品では、現実が反転する。巨石は重さを失ったかのように見え、鏡は並行する現実を垣間見せ、時間はその方向を失う。金属、ガラス、太古の岩石、珪化木といった素材を用いて、作者は親しみと違和感をあわせもつ環境をつくり出す。そこは、固定された意味が溶け出し、知覚そのものが揺らぎはじめる空間である。
作者にとって科学とは、完結した体系ではなく主観的な構築物である。最終的には知り得ないままのものに秩序を与えようとする、一時的な試みにすぎない。作者の作品は、想像力が始まるのはまさに知らないことのなかにおいてである、という考えを手で触れられるかたちにしている。
展覧会では、近年の実践から選ばれた主要作品に加え、同館のために新たに制作されたインスタレーションを紹介。また本展は、「ルーヴェン・カトリック大学(KU Leuven)」の創立600周年記念事業の一環として開催された。作者の作品は、さらに街の先でも出会うことができる。「ルーヴェン・カトリック大学」の招聘により、作者は恒久作品「Carriers」を制作、作品は近くの「シント・ドナトゥス公園(Sint-Donatus Park)」に設置された。「Carriers」は、2025年5月から続く恒久的なアートとサイエンスのルート「And So, Change Comes in Waves」の一部である。このルートでは、ルーヴェンの街のあちこちで16点の新たな作品と詩に出会うことができる。
エヴァ・ヴィトックス(Eva Wittocx)、ラルフ・コリアー(Ralph Collier)、シルヴィア・ヴェンマッケルス(Sylvia Wenmackers)によるテキストを収録。
In the work of the sculptor Alicja Kwade (b. Katowice, 1979; lives and works in Berlin) reality is turned upside down. Boulders appear weightless, mirrors offer glimpses of parallel realities, and time loses its direction. Using materials such as metal, glass, ancient rocks, and petrified wood, she constructs environments that are at once familiar and alienating—spaces where fixed meanings dissolve and perception itself begins to shift.
For Kwade, science is not a conclusive system but a subjective construction—a temporary attempt to impose order on something that ultimately remains unknowable. Her work makes tangible the idea that it is precisely in not knowing that the imagination begins.
The catalogue is published in conjunction with the exhibition Dusty Die at M Leuven. With texts by Eva Wittocx, Ralph Collier, and Sylvia Wenmackers.