ドイツ人アーティスト、アンゼルム・キーファー（Anselm Kiefer）の作品集。2024年3月から7月にかけてイタリアの「パラッツォ・ストロッツィ財団（Fondazione Palazzo Strozzi）」で開催された展覧会に伴い刊行された。

フィレンツェに建つ歴史的建造物「ストロッツィ宮殿（Palazzo Strozzi）」は、20世紀後半から21世紀初頭の芸術において最も偉大な巨匠の一人である作者を招き展覧会を開催した。記憶、神話、戦争、存在をテーマとした印象的な作品で知られる作者は、このルネサンス様式の宮殿建築やイタリアの歴史と対話を交わしながら、独創的な表現をもって、これまでに制作された作品や新作を通じて作者が描いてきた旅路へと我々を誘う。

作者の絵画や彫刻は、どれも不朽の歴史的価値があり、力強い物質性をもって表現されている。キャリアをスタートさせた当初から、歴史、宗教、神秘主義、詩、哲学を融合した芸術表現の道を歩み出していた。1960年代後半に制作された作品のいくつかは、第二次世界大戦の歴史とドイツにおける感情的かつ文化的遺産を考察したものが含まれる。そして今回、金と銀を重ねて仕上げた思い切った構図を用い、宮殿におけるイタリア・ルネサンスの演劇的で深い宗教的な絵画の文脈の中で新たな意義を持つことになる。作品の物理的・概念的な空間に鑑賞者を強く没入させ、具象と抽象、自然と人工、創造と破壊が織りなすその芸術が持つ複雑性を、本展覧会とこの作品集が改めて提示する。