GODZILLA: ASIAN AMERICAN ART NETWORK 1990–2001 by Godzilla: Asian American Arts Network
アジア系アメリカ人アーティスト・コレクティブ「Godzilla: Asian American Arts Network」の作品集。本書は、1990年に設立されニューヨークを拠点としていた先駆的なこのコレクティブによる著作、プロジェクト、出版物、手紙や組織文書、その他エフェメラのアーカイブを、2001年の解散まで追い包括した一冊。ニューヨークを拠点に活動するキュレーターのハウイー・チェン(Howie Chen)が編集を手掛け、「Godzilla」が体現してきた重要な系譜、そしてその幅広い活動に関して詳述するエッセイや資料が収録されている。
「Godzilla」は、アジアン・アメリカン・アートに関する重要な議論がうまれること、そして排他的な社会と美術業界に対して交渉してきたアジア系アメリカ人のアーティストやキュレーターや作家の認知度の向上を支援した。アメリカ人アーティストのケン・チュウ(Ken Chu)、ビング・リー(Bing Lee)、マーゴ・マチダ(Margo Machida)らによってこの集団は設立され、芸術による主張を通じて社会変革を促すことを目指し、展覧会や出版、コミュニティとのコラボレーションを行ってきた。ディアスポラ(※註)集団である「Godzilla」は、地元の一組織から全国的なネットワークへと成長し、10年以上にわたって制度的な差別や西洋の帝国主義、アジア系に対する暴力、エイズ危機、アジア人の性とジェンダーに関する表現、そのほかの切迫した問題に対し立ち向かった。
「Godzilla」は、トミエ・アライ(Tomie Arai)、カリン・ヒガ(Karin Higa)、バイロン・キム(Byron Kim)、ポール・ファイファー(Paul Pfeiffer)、ユージェニー・ツァイ(Eugenie Tsai)、アリス・ヤン(Alice Yang)、リン・ヤマモト(Lynne Yamamoto)といった多くのアジア系移民のアメリカ人アーティストやアート関係者のための社会空間としても機能した。他にも、バンクーバーを拠点とするディヤン・アチャディ(Diyan Achjadi)やトリニダード・トバゴ出身のトッド・アヨン(Todd Ayoung)、ケニヤ生まれのインド系アメリカ人アラン・デスーザ(Allan deSouza)、タイ系アメリカ人のスコウモン・ハスタナン(Skowmon Hastanan)、日系アメリカ人のミチ・イタミ(Michi Itami)、韓国系アメリカ人のヨン・スン・ミン(Yong Soon Min)、ハワイ出身のチャールズ・ユエン(Charles Yuen)など、多くのアーティストらが歴代の運営委員として参加し、横の繋がりや多孔的なネットワークを構想し自主運営を続けた。
※註 ギリシャ語のディア(分散する)とスピロ(種をまく)を語源とする言葉で、「移民」、「植民」また「民族離散」を意味する。主にユダヤ人・ギリシャ人・アルメニア人の歴史的離散を指して使用されていたが、近年は広義的に移民コミュニティ一般を指す言葉としても使われている。