イタリア人建築家、ピエール・パオロ・タンブレッリ（Pier Paolo Tamburelli）の作品集。建築家であり教師でもある作者は、この一風変わった教科書を用いて建築の最も根幹となる部分に触れ、世界を構築する方法を新しく自由な視点で提案する。「ウィーン工科大学（Vienna Technical University）」の「基礎コース（Grundkurs / basic course）」のために考えられた作者のレッスンは、そのレクチャーの礎を形作る注釈付きのスケッチを通じて紹介されている。それは多種多様にラフでありつつ正確、皮肉めいているのに誠実、そして常にユニークな表現を用いている。本書は建築的なアイデアに関する贅沢なヴィジュアル・ソースブックであり、建築という学問分野の入門書として、親しみやすく、それでいて取り留めのない内容に仕上げられている。壮大な理論に向かって歩む途中で一度立ち止まり、メモをとる・ドローイングをする・連想するという直感的なプロセスから学ぶことができる。

作者のレッスンは、「屋根／壁」「シェルター／記憶」「言語／行動」など、一連の弁証法的なペアを軸としている。この組み合わせは実験的であり、時に挑発的であり、建築という方向へ登っていくためのフレームワークを与えてくれる。作者は、より厳しく正確な理論的アプローチの呪縛から解放してくれるイメージ等の素質を信じている。メモというものが持つ柔軟な知恵を受け入れ、我々が自分自身に残す暗号のようなメッセージの企みをもって楽しませてくれる。本書に収録された8つのレッスンは、建築に向かい、通り、巡る無数のルートを気づかせ、初心者・専門家隔てなく、千年もの歴史を持つこの分野と読者との間に、新鮮で親しみを感じる出会いをもたらす。

作者による序文に加え、「ハーバード大学デザイン大学院（Harvard Graduate School of Design）」の建築学科長であるマーク・リー（Mark Lee）の寄稿文を収録。