オランダ人アーティスト、ヘルマン・デ・フリース（Herman De Vries）の作品集。本書は、2015年にインドネシアの「ジャカルタ・ビエンナーレ（JAKARTA BIENNALE）」で展開され、2016年にアムステルダムのギャラリー「Framer Framed」を巡回した展覧会「basic values」の開催に伴い刊行された。作者は、エコロジカル・アートを代表するアーティストの一人であり、文化や生物の多様性といった言葉が一般化される以前から公然と主張してきた。園芸学を学び、1950年代からアーティストとしての活動を開始した作者は、イヴ・クライン（Yves Klein）、ルーチョ・フォンタナ（Lucio Fontana）、ピエロ・マンゾーニ（Piero Manzoni）といった同時代のアーティストが活躍した国際的な運動体「ゼロ」に加わり、このグループの客観性を追求する姿勢は現在も作者のインスタレーションに受け継がれている。作者は、現在ドイツの小さな町エッシュナウを拠点に自然の中で制作活動を行っている。

本展及び本書は、作者がインドネシアを旅して仕事をしたいという念願を叶えたという側面もある。作者は、何十年も前からインドネシアの文化や自然に興味を抱いていたが、島国を訪れる機会がなかった。本展では、作者がサイトスペシフィックな彫刻とインスタレーションを新たに実現。米鎌、ボゴール植物園の竹の茎、米を入れた籠など、地元の工芸品や自然素材を用いて、インドネシアの文化的・生物的多様性と、それらが提供する「基本的な価値」を称えている。