スイス人アーティスト、フランソワーズ・カラコ（Françoise Caraco）の作品集。隠されたものをいかにして表現し、見せるのかを作者は本書において試みている。祖先を探すためにトルコ・イスタンブールに何度も訪れ、自身の苗字である「Caraco」もしくは「Karako」を知る者、知っていた者、あるいは少なくともその名前だけでも覚えている人々と話した。その結果、何世紀にもわたりトルコの大都市に居住していながらほとんど人の目に触れることのなかった、スペイン、ポルトガル、北アフリカ家系である「セファルディ系ユダヤ人」の文化を目にすることとなる。作者は、自身の旅やリサーチをもとに撮影した作品と家族の記憶を丁寧に重ね、そこにイスタンブールのユダヤ人コミュニティーから得た様々な声を織り交ぜた。あまり知られることのなかったイスタンブールの人々の欠片から見出された視点で、その都市の失われつつある過去と今なお活気に満ちている現在の「ポートレイト」を、濃厚かつ繊細に描き出している。