KANAVAL by Leah Gordon

イギリス人フォトグラファーでありキュレーター、作家のリア・ゴードン(Leah Gordon)による作品集。作者は第54回ヴェネチア・ビエンナーレにおいてハイチ館のキュレーターを務めたほか、作品を通してカリブ海のプランテーション、大西洋横断奴隷貿易、囲い込み法(閉鎖行為)、英国の労働者階級の形成などに関する、絡み合い交差するその歴史を探求する。

本書は作者が1995年から続けてきたハイチ南部の港町ジャクメルで行われるマルディグラ(※註)の参加者、オーラル・ヒストリー(口述歴史)の記録である。ジャクメルで開催されるマルディグラは、アメリカ大陸で見られるような、スパンコールで覆われた衛生的でスポンサーのついているカーニバルとは一線を画し、神話や伝説、その国の歴史を演じ、壊す。即興の衣装とシュールな物語は、民族の記憶、政治風刺、個人による啓示を織り交ぜたブードゥー教の影響を受けている。作者は60年前に作られた中判二眼レフカメラ「Rolleicord」を使用し、モノクロのネガフィルムで記録。常に参加者の許可を取り、お金を支払い撮影していた。ストリートの騒々しさから離れ、スタジオ内の静謐な領域へと入ることで、撮り手と被写体との間に合意の上での関係性が生まれていた。このようにして生まれた時間と空間は、マルディグラの歴史的な物語の一面が浸透することを許容したと言えるだろう。

本書は2010年に刊行されたオリジナル版に、未公開の写真やオーラル・ヒストリー、エッセイなどを多数追加した増補版・第二版として刊行された。

※註 フランス系移民によってもたらされたヨーロッパの古い伝統「告解火曜日」。「肥沃な火曜日(ファット・チューズデー)、「シュローブ・チューズデイ」、「パンケーキ・ディ」とも呼ばれる。翌日の灰の水曜日から復活祭(イースター)までの40日間(四旬節)の間断食を行うが、その前にパーティー、カーニバルが開催される。ルイジアナ州ニューオリンズのマルディグラは世界の主要カーニバルにも数えられる。

by Leah Gordon

REGULAR PRICE ¥7,700  (tax incl.)

hardcover
152 pages
240 x 280 mm
black and white
limited edition of 1,500 copies
2021

SECOND EDITION

published by HERE PRESS