フランス人ヴィジュアルアーティスト、ヤスミナ・ベナブデラマ二（Yasmina Benabderrahmane）の作品集。2012年、作者は12年ぶりに故郷モロッコへ帰国し、砂丘や砂漠を渡り絶え間なく変わる風景をスーパー8カメラの映像に収めた。この映像作品のスチル写真からなる本書は、伝統と現代の間にある曲がりくねった道を辿ることを見る者に促す。祖先伝来の土地の現代性と変わりゆく地勢の象徴かつ新しい文化の中心地であるブルグレッグ・バレーをまず訪れる。更に進むと、時間が静止したかのような場所に活気のない村々が点在する岩だらけで何もないシシャワの砂漠が現れる。矛盾だらけの現代モロッコの歴史の舞台となってきた見覚えのある空間と身体を通じて、本書は不安定で無機質で直感的なモロッコの歴史を私たちに体験させる。本書は、2020年1月から4月の間にパリのギャラリー「Le Bal」で開催された展覧会「À bras le corps」に伴い刊行された。