スペイン人建築家、フアン・ヘレロス（Juan Herreros）と、ドイツ人アーティスト、イェンス・リヒター（Jens Richter）の作品集。現代美術史上最も重要な画家の1人であり、絵画「 叫び」で知られるノルウェー出身の画家エドヴァルド・ムンク（Edvard Munch）は、新しい美術館に収蔵されるようにと、オスロ市に自身の作品を遺贈した。これが、この「Lambda」の物語の始まりであった。本書には、スペインの建築事務所であり、ヘレロスが主催する「estudio Herreros」によって考案され、2021年10月に一般公開された「ムンク美術館（Munch Museum）」のデザインと建築プロセスを収録する。題名の「Lambda Files」とは、国際的なコンペティションに応募する建築家の匿名性を守るために使われる仮名に由来する。本プロジェクトは異例にも、コンペティション以降も大衆やメディアによってこの名で呼ばれ続けている。本書は「estudio Herreros」のアーカイブの奥深くへまで探り、通常の出版物では軽視されがちであるプロジェクトの専門的、政治的、技術的背景を詳細に記録した「事務手続き」の資料に光を当てた一冊である。作者らの手によってなされた「Munch project」は、歴史の書き換えと望ましい未来の想像における美術館の重要性、デザインの手段としての対話の必要性、環境問題への積極的関与、大規模なプロジェクトを試みる責任など、数々の現代の問題を探るものとなる。