LOVE ME AGAIN by Michella Bredahl
デンマーク出身のフォトグラファー、映像作家であるミシェラ・ブレダール(Michella Bredahl)の作品集。作者は、繊細で親密なポートレートの制作という内省的な実践を続けることで、女性らしいエネルギーと力を取り戻すための空間を写真で創り出している。
ポートレート撮影という行為を通じて、安心できる場や共感を生み出すにはどうすればよいのだろうか?本作で作者は、友人や知人の親密なポートレートを10年という長い期間に渡って撮り続けることで、女性が持つエネルギーを探求し、このエネルギーに力を与え、自らのニーズと理由に応じて誰に遠慮することもなく自分自身を完全に表現できる空間を取り戻していった。
ナン・ゴールディン(Nan Goldin)、コリーヌ・デイ(Corinne Day)、リーズ・サルファティ(Lise Sarfati)、ディアナ・ローソン(Deana Lawson)など、大きな影響を与えてきた女性ポートレート作家の系譜に連なる作者のポートレートは、内省と自己観察から生まれ、他者の静止した眼差し、物憂げなポーズ、親密な空間の中に欠落した自己の一部を見出している。ホイエグラッドサクセというコペンハーゲン郊外の巨大な公営団地で壮絶な子供時代を過ごした作者は、若くしてモデルにスカウトされ、カメラの前に晒され、物として扱われ、注視され、男性と力の意のままにされることになる。
本書は、セクシュアリティ、安全な場所、被写体のありのままの現実と並行して女性らしさの本質を位置づけることでその力を取り戻していくための実践である。家庭という安全な場所に潜り込み、散らかったベッドの上でメールをしたり、寒い朝に抱き合ったり、壁の戸棚の中を探したり、バスタブにお湯が満ちるのを待っていたりと、女性や他の被写体の最もリラックスし、最も物憂げで、最も多面的で、最も自然な姿を写し出す。作者にとって被写体とは自分で選んだ家族である。自ら体験した家庭内のトラウマを思い出させる面影を彼らの中に探し、カメラ、彼女自身、そして彼女が言葉や言語を越えて擁護し、いつまでも記憶に残したいと願う人々のイメージを通じて、美しく力強い何かを創り出している。
ポートレートにおける新たな表現の登場を告げる本書は、アイデンティティと経験をエンパワーメント、解放、抵抗といった陳腐でつまらない表現におとしめるかわりに、洗練された美意識と連帯感をもって現代に生きる女性であることの静かな奇跡と女性らしい喜びの力を表現している。