アメリカ人アーティストであるメル・オドム（Mel Odom）の作品集。作者の欲望によって形作られたペインティングとドローイング作品を紹介する本書は、トレードマークである精密さが生かされた、大胆で官能的な人物像やポップ・スーパースターたちの祭典である。ニューヨークのクリストファー・ストリートのシャツを脱いだ「クローン」に魅了され南部の田舎町から移住してきた作者は、「自分がこうありたいと願った人物を描いた」と語る。スペイン人編集者であり出版者のルイス・ヴェネガス（Luis Venegas）が作者と共同で編集を手がけ、作者のこれまでのキャリアを網羅し、『タイム（Time）』誌や『プレイボーイ（Playboy）』誌に寄せた初期の作品から最新作までの変遷を描く。

その官能的な作品群には作者とヴェネガスのインタビューから引用された作者自身の考察が添えられており、柔らかなひらめきを見つけるように読める、友人同士の親密な会話であると言えよう。初恋と薬物に溺れたディスコの思い出はピーク時のエイズ危機の喪失感によって重みを増し、ニューヨーク生活の背景であり創作に顕著な影響を与えた日々であった。

「私は......どうにか時間を借りて生きていると思っていた......そうなると、自分の時間を何に使うかがとても重要になりがちである。私はこれらのドローイングを描き......そして、私が死んだら残ると知っていた。私が死んだら、皆が私のことをどう思ったかということだ。」

本書は、恋人の手触り、陶器のような眉、セレブリティのきらびやかな魅力に耽り、快楽を追求するアーティストの主張とともに、この「遺産」と向き合っている。伝統的なアーティスト・ブックに見られるハードカバーを採用した装丁と、ファンジンのような直感的なセンスや趣きを併せ持つこの作品は、ルイス・ヴェネガスが編集を手がけるシリーズの第1弾であり、「APARTAMENTO」18号でかつて紹介されたものである。

「メル・オドムの作品は、彼が描いたものであるとすぐにわかる。そのビジョンは形成外科医のメスのように鋭く、大胆で官能的な人物と極めて繊細なディテールが混在している。」－ ルイス・ヴェネガス