NO MORE WAR by Keiichi Tanaami
日本人アーティスト、田名網敬一の作品集。日本のポップアートのパイオニアと呼ばれる作者が1980年代に制作し、近年に発表された彫刻作品の数々を収録。子供のおもちゃを思わせる木彫りの作品群は、作者が確立した独特のポップでカラフルなスタイルを良い意味で裏切っている。アメリカの商業的なグラフィックデザインと第二次世界大戦にまつわる断片的な記憶を結びつけた映像作品が初期に制作されたが、そこに登場する人物を思わせる物体が一つの不思議な空気を作りだしている。奇妙な世界観を放つこの彫刻を今の我々の目で見ると、ビデオゲームのキャラクターや空想的な建築模型、ポストモダンデザインが連想されるが、伝統的な日本の手工芸とのつながりも確実に感じさせる。1936年に服地問屋の息子として生まれた作者は、第二次世界大戦の終焉が近づくなか、9歳の時に東京大空襲を経験。その後武蔵野美術大学で学び、1969年にニューヨークのアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)を訪ね、ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg)や美術評論家のミシェル・タピエ (Michel Tapié)が来日した際には彼らと仕事をし、ジェファーソン・エアプレイン(Jefferson Airplane)からザ・モンキーズ(The Monkees)まで多数のバンドのレコードカバーをデザインしてきた。1975年に田名網は日本版プレイボーイ誌の初代アートディレクターに就任。また1991年から京都造形美術大学で教鞭をとっている。本書は、STUDIOLO / Edition Patrick Frey シリーズ第二弾として「Trix + Robert Haussman」に続き出版された。スイスのブックデザインアワード「The Most Beautiful Swiss Books」2013年度受賞作品。