チューリッヒを拠点に活動するフォトグラファー、ノア・ノヤン・ウェンツィンガー（Noah Noyan Wenzinger）と、クラッターシチュー（Clutterstew）として知られるノア・スターク（Noah Stark）の作品集。本書はウェンツィンガーにとって初写真集となる一冊であり、コンパクトデジタルカメラを行く先々どこへでも持ち歩き、様々な出来事を独自の視点で記録する青年の青春物語である。主人公たちは作者の親友であり、作者に連れ添い、作者に刺激を与え、作者と共に成長していく。作者の視覚的表現手法は映画、音楽、コンピューターゲームの世界観とあわせて、作者の手本となるナン・ゴールディン（Nan Goldin）、サンディー・キム（Sandy Kim）、ウォルター・ファイファー（Walter Pfeiffer）などの写真家たちから受けた様々な影響の融合体であるため、分類が難しい。

作者の作品は明らかにチューリッヒを題材としているが、スイスのY世代そしてZ世代、またの名をミレニアム世代、ズーマー世代と呼ばれる世代の世界の内幕は、画題内容や表現形式においても典型的なスイスとは全く違っている。そしてまさしくこの相違そのものがこのプロジェクトを魅力的で有意義なものにしている。

本書は、作者がチューリッヒの自宅に保管していた膨大なアーカイブの中から選び取られた、極めて個人的な選集である。作者の日常生活の写真の記録、夜遊びのスナップ、コンサートや休暇、音楽ビデオの静止画までも含まれている。この本は手にした者全てに独特のマークをつける、クラッターシチューの16のドローイングにより締めくくられる。この2人のアーティストはたくさんの興味や美学を共有し、話に事欠かない旧友である。