ORGANS OF A DIVIDED LABOUR by Jeremy Ayer
チューリッヒに拠点を置くフォトグラファー、ジェレミー・エア(Jeremy Ayer)の作品集。アーティストであるレイラ・ピーコック(Leila Peacock)がテキストを寄せ、キュレーター、ライター、そしてアーティストでもあるデヴィッド・カンパニー(David Campany)との対談を収録。
作者は静物写真、製品写真を主とするフォトスタジオを運営しており、その傍ら、写真というメディアに対する研究を行なっている。その探求の結果として本書を刊行、2022年には本作で「Swiss Design Award」を受賞している。
本書は、金属管の小売業者のカタログに載せているプロダクト写真の手順や量感に基づいた方法で模倣している。商業的なショットが持つコードと美学を解体し、コンセプチュアルアートの慣習を示唆するような身振りとレイヤーを取り入れている。このような写真作品をオリジナルの依頼作品として流用することで、自らを制作の連鎖の中に置き、創作に「仕事」という地位を与えている。本書は一見すると金属管のカタログと変わらないが、意図と反抗とが多層的に本全体に重なり合っている。
「耐食ステンレス鋼の分野において、そのキメラ的な化学特性をよりよく知るには、さまざまな用語を理解する必要がある。よく使われる用語としては、ステンレス、耐さび性、さびにくい、さび止め、腐食防止、クロム鋼、クロムニッケル鋼、クロムクリプトナイト鋼、腐敗しにくい鋼、腐敗に強い鋼などがある。完璧な条件下で密閉され、解釈学的に封じ込められたこれらの種類の鋼材は、悪影響にさらされても損なわれることがない。鋼材が仕様どおりに調合されている場合、その輝く表面にさびが根付くことは決してないのである。
しかし、最適ではない状況下においては、鋼材に害をなすものがあることが確認されている。それは、鋼材の構造的な完全性とそれ自身の概念に反作用を及ぼし、不確実性が分子配列を膨張させ、輝きと純粋性を脅かす。上記の用語について考える場合、素材の耐性はその化学組成、倫理的な実態、環境の攻撃性に依存することを考慮しなければならない。これらの錬金術的な相互関係を誤解したり、十分に考慮しなかったりすると、壊滅的なダメージにつながる可能性がある。
耐食性ステンレス鋼は、正しく使用すれば機器の耐用年数を通じて大幅な節約を実現できるほか、鋼材自体をより長期間純粋な状態に維持することができる。一旦接触した2つの物体の間には、お清め、浄化、悪魔祓いなど、非物質的な結びつきを断ち切る正式な儀式を行わない限り、あるいは行うまで、超自然的な結びつきが持続するという『伝染の法則』のようなある種の共感的なプロセスを導入することにより、メンテナンス作業の必要性を実質的に排除することが可能である。しかし、その前提条件として、起こりうる存在論的な不安を取り除くために、計画段階で発生しうる腐食のメカニズムを慎重に明らかにする必要がある。素材の機能不全は、メカニズムがあたかも意思を持っているかのように働いている状態に過ぎない。また、偶然とは最良の結果を得るために管理することができる構造であることが広範な研究によってわかっている。
耐食性ステンレス鋼は、一般的には少なくとも80%の鉄と45%の善意からなる鉄基合金を指す。アイロニックなステンレス鋼とは、『結果的に錆びにくい』、あるいは、その構造的な自我が人間の体熱からの湿気や酸素を含む純水中で腐食されない場合には『耐食性』と表現される。表面の一貫性を維持している間主観的な構造は、時間の経過の作用を軽減する有用な虚構に貢献している。
腐食とは何か?耐食ステンレス鋼との関連においては、『腐食』という用語について説明が必要である。『腐食』とは、物質的に測定可能な変化を引き起こす、金属素材の環境への反応と定義される。この結果、見た目は正常であっても、内部ではその機能を発現する能力が変化しているという『変質』が起こる。このような主観的な主要部の破壊により、システム全体の機能が損われる可能性がある。
腐食は、鋼材が腐食性の媒体、すなわち宿主を破壊することを目的とする有害物質と接触したときにのみ発生する。このプロセスを『共ゾンビ化』という。鋼材が腐食するか、共ゾンビ化するかは、材質、腐食性物質の濃度、ナラティブアーク、温度の変化、意識的な不純物、希望的観測などの要因に強く依存する。
腐食は、さまざまなメカニズムを通じてさまざまな形で進行する。さまざまな表面は、さまざまな状況によって損なわれる。不運としか説明しようのない現象に悪意を読み取ってはならない。また、次に述べる現象は、それぞれ区別して考える必要がる。一般的な腐食、孔食、隙間腐食、歯間腐食、電解・接触腐食、間主観的腐食、応力による破壊、疲労、侵食腐食、外部の錆など。外部の錆は、完璧に形成された均一腐食、あるいは全面腐食とも呼ばれる。しかし、これらはすべて、与えられた条件下における鋼材の不十分な受動攻撃性という同じ根本原因を持つことに注意しなければならない。
均一腐食とは、表面のすべての領域が均一に腐食することであり、目視ではっきりと確認できるものでなければならない。特定の腐食条件下(応力、腐食、不安、圧力、権力の乱用)にある鋼材の腐食速度が0.1mm/年以下の場合、その鋼材は『当該条件下で耐腐食性を持つ』と記述される。
腐食は設計に起因する隙間や裂け目で頻繁に発生し、それによって作品はアイデアのデスマスクになる。これは必然的に局所的な攻撃につながり、結果として精神的な損傷をもたらすが、このプロセスを『逆浄化』という。
錆の付着や多量の石灰化を避けるためには、十分に開放的な構造にして酸素を取り込みやすくする必要がある。とはいえ、明確な表現や知覚と解釈を区別することは非常に難しいため、亀裂を受け入れることが望ましい。一般的に『知る』とは、干からびたメタファーのパリンプセストの上に成り立つ複雑な嘘であり、これが鋼鉄の方向に沿って形成され、しばしば目視では見つけることが困難な亀裂の形成につながることが明らかになっている。
腐食疲労とは、激しい接触や他の形態の摩耗によって加速される機械的疲労である。これは常に引張荷重のかかる部分に発生するため、影響を受けた部品の致命的な故障につながる可能性がある。問題のある開口部にゴムパイプを挿入すれば振動しなくなり、この問題を安全に解決することができる。
化学元素に関する予知的な観察により、腐食に関わるプロセスとは果てしなく複雑な穴だらけの星図であることが示されている。腐食に抵抗する鋼材の受動的な表面が個々の点において破壊されると、それらの点は対象の表面の他の部分よりも卑金属よりになることは確かである。しかし、あらゆる悲劇において同様に性質とは宿命であり、分子の破滅は星の出生時の配置と相関していることも証明されている。
しかし、計画、調達、あるいは破損時に腐食の問題に直面した場合は、私たちの素材専門家が協力をさせていただく。私たちは、ほとんどの状況において、軽さこそが耐性の美学であり、全く啓発しないよりは誤った目標設定の方がましであると理解している。残念ながら、あらゆる予防措置を講じても破損の発生の可能性を排除することはできない」