アメリカや世界情勢の研究を行うメラニー・マカリスター（Melani McAlister）の作品集。

パレスチナ・イスラエル戦争が2023年10月7日にパレスチナのガザ地区で開戦すると、作者は自身が日々記録しているものを用い、急速に進む紛争と、それと並行してアメリカのメディアにおける表現方法の展開を追い始めた。数十年にわたる米国の対中東政策の研究者としての経験と、自身の個人的な活動家としての経歴を生かしたこの鋭くダイナミックなテキストは、現在の戦争の壊滅的な展開をリアルタイムで追跡し、この地域の歴史における過去の多くの瞬間と、それらが促した抗議や芸術的な反応との間に生じた反響を明らかにする。この一連の思案は、パレスチナの抵抗と苦境からの回復のストーリーを語るアラブとアラブ系アメリカ人の詩人やミュージシャンの作品を通して、物語と記憶が持つ不朽の力を探る。

イスラエル・パレスチナ紛争、その後の戦争と和平への試み、そして2024年に全米各地の大学で起こった一触即発のデモに至るまで、交わされそして破られた初期の政治的な「約束」を包括する本書は、この地域の歴史と、世界的な意識から見たこの地域のユニークな位置づけを知るための入門書となる。パレスチナ解放がかつてないほど切迫した危機に瀕している今、その意義について考える一冊である。正義と平等の可能性、そしてあらゆる困難を乗り越えて活動家やアーティストが未来に託す希望について考えるのだ。

本書はイギリスの出版社「MACK」が刊行する、文化論者やキュレーター、アーティストが1つのテーマや作品、思考をテキストで掘り下げるシリーズ「DISCOURSE」の1冊として刊行されている。