ウィーンを拠点に活動するガーナ人画家、アモアコ・ボアフォ（Amoako Boafo）の作品集。2024年10月から2025年1月にかけて、ウィーンの「ベルヴェデーレ宮殿（Schloss Belvedere）」の下宮にあたる「ローワー・ベルヴェデーレ（Lower Belvedere）」で開催された展覧会に伴い刊行された。同展は、作者にとって初めてヨーロッパの美術館で開催される展覧会となった。

作者は、新世代の黒人アーティストのなかで最も重要な「声」を発する一人として広く評価されている。ガーナ、アクラの美術学校を卒業したのち、「ウィーン美術アカデミー（Academy of Fine Arts in Vienna）」で2013年より学び始め、そこで作者は、指を用いた独特な描画技法を駆使するスタイルを確立した。指を使って人物を描くことで、他の絵画が描く平面的な表現と対照をなすようにこの技法は彫刻的な効果を生み出す。作者が描く人々、友人や知人、著名人たちは、黒人としてのアイデンティティの概念を絵画で体現している。この概念は彼ら独自の文化に由来しており、圧倒的に白人優位である社会がもたらした差別的なレッテルに対する抵抗の行為として理解される。このブラック・サブジェクティビティ（黒人の主観性）の形は、モデルとなった人々の姿にも現れている。描かれた者たちは、自信に満ちた個として鑑賞者と向かい合い、時に直接的なアイコンタクトを観る者へと求めてくる。

黒人解放運動の歴史上、重要とされる先駆者たちの文学作品から着想を得たモチーフとともに描かれた作者の絵画には、黒人の歩んだ歴史と深く繋がっている背景が機微に表現されている。

The Ghanaian painter Amoako Boafoja is considered one of the most im - portant voices from a new generation of Black artists. Boafo portrays his friends, acquaintances, and people from public life, presenting a contemporary image of Black self-empowerment and self-perception. The people portrayed by Boafo embody the idea of Black identity that draws on its own culture, to be understood as an act of resistance against the racist labels of a predominantly white society. The artist's intensive engagement with Black history is subtly reflected in his paintings that include motifs inspired by literary works by key pioneers of the Black Freedom Movement.