REAL REVIEW 12 Issue for Spring 2022
イギリスの建築家ジャック・セルフ(Jack Self)が主宰する「REAL foundation」刊、「what it means to live today」をテーマにした季刊のコンテンポラリー・カルチャー誌『REAL REVIEW』の第12号。本号のテーマは「ABSOLUTE PROXIMITY」。本誌のオリジナルデザインはイギリスの出版社「IN OTHER WORDS」を主宰するデザイン・スタジオ「OK-RM」が手がける。
欲しいものや、会いたい人がはるか遠くに感じる。その他のすべての物事は、あまりにも近くに感じる。日常生活は、不正確に調整されている。ロックダウンは人々を痛々しいほど激しく引き離した一方で、仮想世界は人々をいやになるほど一緒くたにしてしまう。皆が同じものを欲しがる。誰もが広々とした空間を切望している。人々は実際の親密さを体感しないのにに、お互いが近すぎると感じている。このクラウストロフォビア(閉所恐怖症)と孤立状態の逆説的な感覚が、本号のテーマである「ABSOLUTE PROXIMITY(=絶対的な近接)」の状態である。
我々は、なにか変わったのだろうか?考古学者であるデヴィッド・ウェングロー(David Wengrow)に、「すべてのものの夜明け(the dawn of everything)」と題したインタビューを敢行。哲学者のスラヴォイ・ジジェク(Slavoj Zizek)とティモシー・モルトン(Timothy Morton)の両者は対談し、地球上の人類の未来について一致した意見を交わしている。デザインスタジオ「METAHAVEN」は、経験と感覚の本質について寄稿、折込付録の形式で収録されている。写真家のタシタ・ディーン(Tacita Dean)は、海に打ち捨てられたある船を撮影しテキストと共に掲載され、アーシュラ・K・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)は、アーティストのマガリ・レウス(Magali Reus)の写真と共に、「ヒーローズ・ジャーニー(神話の法則・英雄の旅)」と呼ばれるフィクションの構造について論評している。映画キュレーターのロイジーン・タッポニ(Róisín Tapponi)は付け爪について考察し、建築家であり本誌主宰のジャック・セルフ(Jack Self)は約30分で結果が出る「ラテラルフロー」と呼ばれる方式の新型コロナウイルス感染症における迅速検査とマインドフルネスについて語る。
他にも、作家で編集者のクレア・マリー・ヒーリー(Claire Marie Healy)が少女らしさを象徴する笑い方について、評論家であり作家、編集者のセバスチャン・オルマ(Sebastian Olma)が アートワールドにおける自主性について、ヴィヴィアン・アモス(Vivian Amos)がミレニアル世代が好むピンク(ミレニアルピンク)とZ世代が好むグリーン(ズーマーグリーン)について、建築史家であり映像作家のアンナ・ウルリッケ・アンデルセン(Anna Ulrikke Andersen)が慢性疼痛を患う9人のノルウェー人に行った文化的調査について、建築家の「SECRETARY」がストックホルムに存在する14,495棟のアパートについて、クリスタベル・チャン(Kristabel Chung)が香港における住み込み労働について、ジェイコブ・ドライヤー(Jacob Dreyer)が中国の「寝そべり主義」について、建築理論家のハリー・ウッドロック(Harry Woodlock)が生命力の消耗について、デザイナーであり編集者のマディ・ウェーバーズ(Maddy Weavers)が匿名性についてそれぞれ論評を寄せた。@whylookatanimals は、鳥から魚へといった異種間の給餌について紹介している。