RED UTOPIA by Jan Banning
オランダ人フォトグラファー、ヤン・バニング(Jan Banning)の作品集。本書は、ロシア革命後の100年間で共産主義体制が残したものが何かを探る、非プロパガンダ的調査に基づくものである。内部党員や活動家のエンヴァイロメンタル・ポートレート(※註)や政治的シンボルなどが飾られた政党事務所を中心に写し出している。写真に写る者はみな、共産主義独裁政権を支持する者たちとは異なり、当時優勢であった新自由主義(ネオリベラリズム)の傾向に背き、強い信念と自由な選択の意識を持ちその政党に所属していた。本書は、いまだにイデオロギーが何か重要な役割を担っているとも言えるインド、イタリア、ネパール、ポルトガル、ロシア、この5つの「非共産主義」国家に焦点を当てている。1917年のロシア革命のずっと以前から、共産主義はより公平な社会を目指す理想主義者(アイデアリスト)や革命家たちを鼓舞してきた。共産主義と資本主義の闘争は、とりわけ1917年から1989年の間において、近代史の主となるテーマの一つであると言える。本物の社会主義の経験、すなわちベルリンの壁崩壊や新自由主義の勝利などは、共産主義のイデオロギーに対するとどめの一撃であった。多くの共産主義政党は1989年以降解体されるか、少しずつ勢いを失っていった。そして1980年代以降、多くの国において貧富の差が大きくなっていく中で、自由市場のみが唯一残ったイデオロギーとなったのであろう。
※註 本人に限定せず、周囲にとりまく環境やその者を象徴する物まで含めて人物を描く手法
by Jan Banning
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