ROTTING FROM WITHIN by Abdulhamid Kircher
ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、アブドゥルハミド・キルヒャー(Abdulhamid Kircher)の作品集。
本書は、作者が父親の過去を掘り起こしたときに感じたことが形になっている。つまり、家長である父親の中に世代的なトラウマを感じていることを発見したこと、それに続いて、受け継がれてきたものの中から見出した芸術家としての自己を発見したことである。作者が17歳のとき、薬物売買と殺人未遂で出所したばかりの父親との再会から始まった写真の旅は、自身の過去を振り返ることと重なった。ベルリンで生まれ、若くしてアメリカに亡命した作者は、写真というメディアとその可能性との間に深い関係を育みながら、父やトルコの文化や遺産に親しんでいた。そうすることで、親密さを抱くための入り口をカメラはもたらしてくれた。
本作では、アイデンティティ、暴力の美化、男らしさというものの神話、そして写真が世界をうまく対処し理解するためのメカニズムを与えてくれるヴェールである、といった心理的な問いに深く入り込みながら、より深層の部分における個人的かつ自伝的な「糸」を、写真の力と率直さをもって紡いでいく。糸を通していくような作者の視覚的な声は、内なるモノローグと、ニュアンスに富んだドキュメンタリーへのアプローチが交わるところで語られている。ポートレイト、観察、記録、日記などの複雑なアッサンブラージュを通じ、本書には視覚的な連想の網が張り巡らされており、その中で作者は、憶測と現実の間の緊張感、身近な人間でさえも本来は知り得ないこと、そして我々が生まれ落ちてきた人生の行き先をいかにして選ぶことができないようになっているかを捉えている。
by Abdulhamid Kircher
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¥10,450
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