ロンドンに拠点を置くアーティスト、アイダ・ニッセン（Ida Nissen） の作品集。

本書は、作者の創作プロセスの意識的な記録であると同時に、完成作品のコレクションとしても機能するアーティストブックである。通常はCMYKの4色印刷を用いるが、本書ではそれに「パントーン」のシルバーメタリックを追加した5色印刷で仕上げられており、作者が受けた影響やアイデアの源となったものの幅広さを提示し、遠くと近く、異質なものと似通ったもの、隠されたものと明らかにされたものとの間を揺れ動くアイデアと基本的な手順を解き明かしている。

カラー写真の暗室や大判カメラを思わせる形状や色が、思い出、ファウンドイメージ、本の切り抜きや切り取られたかたちと混ざり合い、完成されたコラージュ作品に散りばめられた意識の流れを形成している。

本のタイトルとスクリム生地の質感を連想させるざっくりとした織りのグラナイト・ブラックの布でハードカバーを包み込んでいる。全体を通じて使用されている先述のシルバーインクは、作者が用いるアナログかつカメラベースの実験的な実践の基礎にあるゼラチンシルバープリントの現像プロセスを思い起こさせる。

また、ここで使われている「Favorit Hangul」というフォントは、筒状の形と幾何学的な構成が韓国語のハングル文字を形式的に参照していることから、韓国人であるアーティストによる自身のルーツの探求という側面を強調し補完している。

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