SHASHINZO by Hitoshi Tsukiji [RARE / SIGNED]
日本人写真家、築地仁の写真集「写真像」。写真史家・金子隆一や写真家・島尾伸三、谷口雅と共に、自分たちを含めた写真集シリーズを刊行する「場」として1979年に立ち上げたCAMERA WORKSより1984年に刊行。写真表現の「構造」に焦点を当てた29点の作品を収録。この29点の収録作品は、作者がCAMERA WORKSメンバーの金子隆一、本書を始め、築地仁の全ての作品集のデザインを手掛ける装丁家の菊地信義と共に約1年間、毎月集まりセレクトを何度も繰り返した結果として残ったもので、作者曰く「これ以上のない」構成となっている。
わたしが「写真像」で求めたことは、写真の「構造」をあきらかにすることです。その「構造」とは、わたしがうつした、被写体の性質と内容、光と影、質感とディテール、現実、現場、現在がくみあわされた、写真表現の薄い皮膜のような層のかさなりです。(……)「写真像」では、わたしの写真の表現の「構造」の断面をあきらかにすることを重要なコンセプトにし、そこから見えてくる、写真のもつ思考の構造と意識の本質を図示したいと考えています。- 築地仁、2016年12月
都市を彷徨い、透徹した眼差しと優れた技術を以って6×6カメラで捉えられたイメージには、抑制の効いた明暗や質感、構図に独自の美が宿り、精緻な銀塩プリントの形・量・質・色による「物」としての表現がより一層際立っている。被写体から感じる感覚の質感(クオリア)、世界の構造の主体的な認知、写真の「いま、なぜ、ここに」、記号の揺らぎやずれに浮き上がる写真の美の関係性と心的構造――写真の純粋なエキスの図示を目指した本シリーズは、まさに築地にとって、写真による写真の本質そのものの表明であったと言える。
スリップケース入り。稲川方人によるテキストを収録した別紙「写真像ノート」が付属。
対談:築地仁(写真家) × 金子隆一(写真評論家、写真史家、写真集コレクター)