THE EPIC LOVE STORY OF A WARRIOR by Peter Puklus
NY在住ハンガリー人アーティスト、ピーター・プクラス(Peter Puklus)の作品集。煉瓦のように分厚い本に織り込まれる膨大な数の写真は作家により撮影されたもので、中東欧の架空の一族の視点を通して、第一次・第二次世界大戦から共産主義の盛衰まで、20世紀に起きた偉大な出来事を物語る。写真のモチーフは作家の独断で選び取られ、独自の言語で語られる。例えば、地面に突き刺さった1本のポールはルーマニア共産政権によって裁かれたイオン・アントネスクの処刑を描き、オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者である、フランツ・フェルディナントの暗殺は束ねられた釘により描写される。こうした表現のなかには、バウハウス、前衛芸術、モホリ=ナジなど美術史へのリファレンスをも含む。作中に描かれる出来事は、一般に史実として集団に記憶されている一方で、個々の経験やそれらの言い伝えを介して人々の心に焼き付けられたものとしても、また存在する。作者は両者を連想ゲームのように操りながら、極めてユニークな表現を用いて20世紀に繰り広げられた出来事を描く。それは実際に東から西へと移住し、右派から左派へと政治転向を遂げた、彼自身の一族の足跡を辿る行為でもあり、史実と個人の経験の間に横たわる相関性がいかに複雑で、あてずっぽうであるかを示す。およそ全ページに亘り、一文字ずつ綴られる小さなアルファベット文字からは、ロシアの詩人であるマリーナ・ツヴェターエワによる詩が織り成される。不確かな未来を見据えながらも、20世紀初頭の悲惨な出来事に立ち向かう人々の人間性を謳うその詩には、独特の表現や言語によりぼやかされた、本作に底流にあるものが潜む。
by Peter Puklus
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