THE TWOFOLD COMMITMENT by Trinh T. Minh-ha
ベトナム出身の映画監督、トリン・T・ミンハ(Trinh T. Minh-ha)の作品集。作者の映画作りの文脈を広範に考察し、その代表的な作品である『Forgetting Vietnam』(2015年)を中心に据えた一冊。同作は、二頭の龍が争い、そのもつれた身体が南シナ海へ落ち、ベトナムの湾曲したS字型の海岸線を形作ったのだという創世神話のひとつを主題としている。ベトナム戦争終結から40周年を記念し、古代の伝説からインスピレーションを得て、現代における、現在進行形の陸と水の対話を描き、歴史と文化の再記憶のための第三の空間を生み出した作品である。
本書には、『Forgetting Vietnam』の抒情詩的な台本に、ところどころで映画のスチル写真を添えて配置している。作者と、映画学者、音響学者であるパトリシア・アルバレス・アスタシオ(Patricia Alvarez Astacio)と、映画を専門とするアーティストであり教育者、キュレーターであるベンハミン・シュルツ=フィゲロア(Benjamín Schultz-Figueroa)、映画学の教育者であるエリカ・バルサム(Erika Balsom)、哲学者であるルーシー・キム=チ・メルシエ(Lucie Kim-Chi Mercier)、映画学、映像人類学、ジェンダー学を専門とするドミティッラ・オリヴィエリ(Domitilla Olivieri)、ステファン・オステルフェー(Stefan Östersjö)、現代音楽パフォーマンスを専門とするイリット・ロゴフ(Irit Rogoff)、シャオルー・グォ(郭小橹 / Xiaolu Guo)の一連の対話によって、主題をさらに発展させている。これらの対話は2016年から2022年の間のものであり、作者の作品においてキーとなるコンセプトのインデックスと共に収録されている。