THINGS FELT BUT NOT QUITE EXPRESSED by Sohrab Hura

インド・チンシュラ出身のフォトグラファー、ソラブ・フラ(Sohrab Hura)の作品集。2022年から2024年にかけて制作された本作は、愛、喜び、家族、人間関係など日常的なシーンを描いたキネティック・イラストレーション作品をまとめたものである。自費出版で制作された写真集で世に知られる作者が、本作では写真の形式に対する固定概念から離れ、映画の彩色技術を用いて「テクニカラー(Technicolor)」のソフトパステルで着色し、ポートレイト、静物画、ありふれた風景に流動性を与え、感情を染み込ませた。

病弱な家族の優しいポートレイト、色鮮やかな夕陽と自由に流れる水、いたずら好きなペットや兄弟(もしくは姉妹)、人の手が加えられていない粗い風景の中で出会う幽霊のような人物、シュールな火葬の儀式。孤独や病を描いた肖像は、再構成されたミームや和気藹々とした絵画的描写が交わって重なる。作品につけられた皮肉混じりのタイトルは、ドローイングの主題だけでなく、作者自身をも嘲笑うかのように、観る者と結託して密な鑑賞体験を創り出している。

本書に収録させている作品群は、作者が写真の恒久性に対して相容れないと感じていた時期に生まれた。ドローイング作品に転向したことにより、徐々に二極化が進む世界の中で、日常生活の奇抜なものや儚いものを捉えることができるようになった。本作の遊び心溢れるトーンは、印象派とシュルレアリスムが混ざったスタイルによってさらに表現の幅が広がり、芸術を通していかにして感情を想起し不朽のものとするかを実験した、予測不可能な一冊となっている。

by Sohrab Hura

REGULAR PRICE ¥10,450  (tax incl.)

hardcover
160 pages
180 x 300 mm
color
2024

published by MACK