日本人写真家、柴田敏雄の作品集。日本で最も評価されている写真家の一人である柴田敏雄のキャリアを網羅したモノグラフである。

柴田がこれまで刊行してきた写真集の中では、唯一の英語版のモノグラフであり、人間が作り出した建造物と自然界との関係を捉え、細部まで精巧に描写された写真を全てのページにわたって見ることができる一冊。

作者の大判カメラを用いた現代風景写真は、心を揺さぶる美しさ、優美な構図、細部に至るまでの綿密な描写を特徴とする。時に長時間露光を用い、人物や水平線、地理的な場所の特定をできるだけ排除し、ダム、橋、貯水池、道路などの構造物が山腹、河川、森や野原などの自然環境と相互作用をもたらす様子を捉えている。こうして生まれたイメージには、様々な模様や線、流動的な動きが広がり、日本的な美学も感じさせる絵画的な構図が際立っている。

本書のキュレーションと解説は、現代写真界で最も博識である批評家の一人、フィリップ・プロジャー（Phillip Prodger）が担当。プロジャーはロンドンの「ナショナルポートレートギャラリー（National
Portrait Gallery）」の写真部門の責任者、マサチューセッツ州セーラムにある「ピーボディエセックス博物館（Peabody Essex Museum in Salem）」で写真部門の創設キュレーターなどを歴任する。

柴田作品のファンだけでなく、彼の驚くべき作品をまだ知らない鑑賞者にとっても魅力あふれる一冊として仕上げられている。