WE WANT TO LOOK UP AT THE SUN, BUT COULD THE SUN BE LOOKING DOWN ON US? by Rudy Guedj & Olivier Goethals
オランダを拠点に活動するデザイナー、イラストレーターのルディ・ゲージュ(Rudy Guedj)と、建築家、アーティストのオリヴィエ・ゲータル(Olivier Goethals)による作品集。第22回「ミラノトリエンナーレ2019」にオランダが出展した「I See That I See What You Don’t See」は、人間、動物、風景と暗闇の関係性を重層的で多次元的なイメージとして提示した。世界でも有数の眠らない国オランダは、真っ暗闇になることがほとんどなく、このことがそこに暮らす全ての生き物の健康や行動に影響を与えている。この展覧会は、森林、パノラマ、広場で構成された万華鏡のような風景に見る者を誘い、そこではデザイナー、アーティスト、研究者たちが光に晒され過ぎていることや暗闇の意味を探求していた。自然の均衡が崩れたことに多大な貢献をしたデザインだが、使いようによっては暗闇と人との関係を修復することもできる。 「I See That I See What You Don’t See」の背景美術は、この2人のコラボレーションから生まれた。展覧会の設計と建物は、他の役者が語る物語の入れ物に過ぎないと考えられがちである。しかし2人は、空間とグラフィックという2つのデザインの作り出すレイヤーがどのようにして展覧会の軸となる物語の弧(narrative arc)を支え、これに反応できるかを明らかにしようと試みた。 本書は、建築と設計に共通する構造的な性質だけなく、この2つの行為に備わっているはずの声を明るみに出している。2人のデザイナーは、もはや存在しない空間についての味気ない記録として本を使うのではなく、本を通じて自分たちの方法論に遡るための時間軸を示唆している。本書は、展覧会のデザインの前後と最中に制作された素材を使って、2人の創造のプロセスの不完全な概要を作り出そうとしている。このコラボレーションを通じて2人が発見した建築とデザインの間に存在する数多くの空隙にも光が当てられている。『We want to look up at the Sun, but could the Sun be looking down on us?』は、展覧会のデザインのために、またはこれに着想を得て制作された作品のハイブリッドな解釈となっている。