WHAT FREEDOM IS TO ME by Isaac Julien
イギリス人アーティスト、アイザック・ジュリアン(Isaac Julien)の作品集。2023年4月から8月にかけてロンドンの「テート・ブリテン(Tate Britain)」で開催された展覧会に伴い刊行された。現代の最も重要かつ先駆的なコンテンポラリー・アーティストであり、映像作家の一人である作者の作品をまとめた魅力的な一冊に仕上げられている。すばらしくも力強い作品を美しく掲載し、この非凡なるアーティストに関する称賛と理解を深める。
また、特注のARアプリで作品を鑑賞することもできる。ビデオ・スチールのセレクションがアプリによって命が吹き込まれ、作者の映像とインスタレーションへと読者たちを没入させる。「App Store」もしくは「Play Store」でスマートフォンやタブレットにインストールし、アプリを起動させ、印のあるページの画像に端末をかざすと、本を超えた次元で刺激的な体験ができる仕様となっている。
「ダンス、演劇、音楽、彫刻、絵画、それぞれ違ったアートの作り方のすべてが私の作品に収められており、だからこそ、私は表現をする媒体として、映像を選んだのだ」ーアイザック・ジュリアン
作品の理解へと導く道標である本書は、ポストコロニアリスムを中心とした問題を現代美術で形にする作者の40年以上にもわたる先駆的な活動の領域をあらわしている。1980年代初めから現代にかけてさまざまな大陸や時間と空間における人々の動きを研究した初期の作品から、大規模でマルチ・スクリーンを用いたインスタレーションまでをも紹介する。「Sankofa Film and Video Collective」(1983-92年)の一部となった黎明期のプロジェクトや、空想家のアフリカ系アメリカ人の演説者かつ哲学者で、自ら自由を勝ち得た自由の戦士であるフレデリック・ダグラス(Frederick Douglass)の人生と時代を描いたポートレートで高い評価を受けた10のスクリーンを用いる映像インスタレーション「Lessons of the Hour」(2019年)、「Once Again … (Statues Never Die) 」(2022年)などを収録。
本書の制作には、多種多様な作家やコラボレーターが参加している。作者のクリティカルな思考や、映画、ダンス、写真、音楽、演劇、絵画に彫刻など、欲望や歴史や文化といったテーマに基づいて生まれた作品によって、多岐にわたる芸術の分野間にある壁を壊していくよう、彼らの貢献が導いてくれる。
編集を「テート・ブリテン」イギリス・現代アート分野のキュレーター、イザベラ・メイドメント(Isabella Maidment)が手がける。