S&D#024 / APE#202: ANYTHING BUT CERTAIN by 019
ベルギーのゲントを拠点とするアーティスト・コレクティブ「019」による作品集。「S&D#025/ APE#047: So Many Dark Gifts」、「S&D#024/APE#069: Sabotage And Complicity」、「S&D#024 / APE#117: Occupation and Hospitality」の続編である。
「019」は、アート、グラフィックデザイン、建築に関するプロジェクトやリサーチのために設立されたベルギー・ゲントにある旧工場地を利用したスペースであり、そこで活動するアーティスト集団である。「019」の現在を視覚化することを目的とし、過去に実現したこと、そして未来の可能性をアーカイブした、記憶と夢を混在させた一冊。
本書は、先にプロジェクトを発案し、あたかも未来が既に過去に属しているかのように扱うという遊び心に溢れたアイデアから発想された。創造性が常に驚きや偶然に対して適応することを必要とする一方で、持続可能な実践を模索する中で感じるますます多くの期待、またそれに伴い事前に何をするべきか知っていなければならないという自身が置かれた状況を揶揄することを、作者らは好んでいた。しかし、パンデミックの発生は、人々が物事を分かち合うことが困難な場所(災害の共有というネガティブな意味合いでない限り)へと世界を変えてしまい、人々を超現実的な現在の中へと閉じ込めた。この出来事は、当初の構想に変化をもたらした。共有された未来をどのように想像するのか。すでに起こってしまった大災害を前にし、現在とは異なる未来を想像する余地を見出せない時に、どのようにこの圧縮された現在という空間を乗り越えることができるだろうか。人々が持つ集合的な過去を、未来の生存のために活かせる資源へと変換するには何ができるのだろうか。
本書は、過去の栄光を振り返ったり、未来の成功を期待するようなアンソロジーではなく、むしろこれまで記録されてきた過去を再構成しながら、架空の道筋を切り拓き未来を探っていくサバイバルガイドである。それは、アーカイブ(=過去)を刷新や変化のきっかけの宝庫として捉える近道でもある。人々が共同体として共有する過去の層を掘り下げることで、今にも弾け飛ぶ勢いを持った言葉とイメージの混成した表層、アーティストたちの旗を掲げ、未来を既に存在するものかのように解き放つ、出現途中の島の発見へと鑑賞者を導く一冊である。
エッセイ:Adriënne van der Werf, Edward Hollis, Joachim Dumoulin, Katinka de Jonge, Maíra Dietrich, Mathew Kneebone, The Serving Library, Tom Van Imschoot & Waterland
デザイン: Dries Voet, Haron Barashed, Valentijn Goethals, Lore Jansens, Juliane Schmitt & Kaat Verkammen