CAROLE GIBBONS by Carole Gibbons
スコットランド出身のアーティスト、キャロル・ギボンズ(Carole Gibbons)の作品集。
「最高の絵画を見ると言葉が出ない。たとえば、アンリ・マティス(Henri Matisse)やピエール・ボナール(Pierre Bonnard)、エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch)、パウラ・モーダーゾーン=ベッカー(Paula Modersohn-Becker)の絵画がそうだ。あるいは、キャロル・ギボンズの絵画だ。」ーーアンドリュー・クランストン(Andrew Cranston)
20世紀後半のグラスゴーに現れた、最も特徴的で想像力に富んだアーティストの一人である作者の作品をまとめた初のモノグラフ。作者の絵画には色がはち切れんばかりに溢れており、闇と光の両方の物語をほのかに伺わせる。象徴主義やナラティブが豊かに用いられつつ、美術史や神話のモチーフが作者自身の人生経験と融合しているその作品群は、情熱的かつ深遠なる精神世界に触れさせてくれる。
グラスゴーの「サード・アイ・センター(Third Eye Centre / 現「CCA(Centre for Contemporary Arts)」にて展示された最初の女性アーティストの一人であるにも関わらず、作者の作品のほとんどはいまだに広くは知られていない。グラスゴー出身の小説家、画家、詩人、劇作家であるアラスター・グレイ(Alasdair Gray)や現代美術家のダグラス・アバークロンビー(Douglas Abercrombie)、アラン・フレッチャー(Alan Fletcher)などの同輩たちにキャリア初期から高く評価されていた作者の人生と仕事は、その後、不運や悲劇、偏見に悩まされることとなる。作者に大きな影響を及ぼしたスペインでの滞在を除き、人生のほとんどを息子のヘンリーを育てたフィニエストンの自宅で働きながら過ごした。フランスの画家であるジョルジュ・ブラック(Georges Braque)やデンマーク人画家であり、詩人、彫刻家のペア・キルケビー(Per Kirkeby)から影響を受け、重ねられた曖昧な土色のトーン、玉虫色の絵の具、燦然たる色の思いがけない一筆をもって描かれた静物画など、最も力強い作品群はフィニエストンを舞台として生まれている。
遅ればせながらも、本書は、神話的な抽象概念から自画像、無意識、家庭の内部など、様々な時期と主題にわたり、大規模なキャンバスから紙のものまで、作者の作品を幅広く紹介する概説的一冊である。現在における作者の遺産の価値に光を当てた現代アーティストのルーシー・スタイン(Lucy Stein)とアンドリュー・クランストン(Andrew Cranston)のテキストも収録する。