『A Magazine Curated By』は、2018年に自身のファッションブランド「ピーター・ドゥ（PETER DO）」を創設したベトナム系アメリカ人デザイナー、ピーター・ドゥ（Peter Do）を第26号のゲストキュレーターとして迎える。

この若きデザイナーは2023年初頭にファッションブランド「HELMUT LANG（ヘルムート ラング）」のクリエイティブ・ディレクターに就任、それ以前には2018年に自身の名を冠したブランド・ラインを設立している。

本号では、「ホーム」をテーマとし、様々に異なる場所や人々、物、そして人がどのように記憶するかを探る。本企画は彼にとってこれまでで最も親密な企画であり、読者がこのシャイなデザイナーの内なる物語を知ることができる一冊であろう。

詩人であり作家のオーシャン・ヴオン（Ocean Vuong）、「ピューリッツァー賞（Pulitzer Prize）」受賞作家であるヴィエト・タン・ウェン（Viet Thanh Nguyen）をはじめとする、ベトナム人ディアスポラ（※註1）から由来する精神が反映するような表現が本号には寄せられ、あわせてメアリー・H・K・チョイ（Mary H.K. Choi）が、沈黙と創造性の間における自身の個人的な関係性を著している。『 青いパパイヤの香り（英題：The Scent of Green Papaya）』で2024年のアカデミー賞にノミネートされた、カルト的な人気を誇るベトナム系フランス人映画監督のトラン・アン・ユン（Tran Anh Hung）は、 ベトナムの子供時代のレシピを添えて、サイゴンのウェットマーケット（※註2）のルポタージュを撮影した。ヴィジュアル・アートデュオ、「ハート+レシュキナ（Hart+Lëshkina）」は、香りと記憶から着想を得たフォト・エッセイを制作。「ギメ東洋美術館（Musée Guimet）」とのコラボレーションでは、キュレーターであり研究者のChuong-Đài Võとフォトグラファーのヌー・スアン・ファ（Nhu Xuan Hua）がベトナム地域の工芸品を再文脈化して掘り下げる。加えて「2023 Aperture Portfolio Prize」受賞作家であるフォトグラファーのヴァン＝ニー・グエンは、ピーターの生まれ故郷であるビエンホアへ共に戻り、幼少期ゆかりの場所へと彼のデザインを持ちこみ、コラボレーションを生み出した。

主な収録内容：
LOVE、FUTURE、‘HOME’、FRIENDSHIP、MUSE、HERO、FAMILY、CRAFT、COMMUNITY、RESEARCH、SILENCE、SCENT、OBJECTS

コントリビューター：
アン・ズオン、バオ・グエン、ブレンダ・ヴァイシャー、Chương-Đài Võ、ハート+レシュキナ、フイ・ルオン、ジョアンナ・イー、マーク・ボスウィック、メアリー・H・K・チョイ、マシュー・ラヴァンシー、 ニュート・グエン、ヌー・スアン・ファ、ニコラス・ヘニ=チン・ドゥック、オーシャン・ヴオン、サラ・パク、セルゲイ・バルチューク、 サイモン・ヘーガー・クヌーセン、 トラン・アン・ドゥン、トラン・アン・ユン、トリシャ・ドー、ヴァン＝ニー・グエン、ヴィエット・タン・グエン

Peter Do：
2018年、ニューヨークで設立。人々の生活における複雑さに適応すべく、「減らす」という過程を通してあらゆるディテールをテストし磨いている。思慮に富むデザインを通じ、ファッションにとって新しい未来を想像することが理念として掲げられている。ベトナムのビエンホアに生まれ、14歳でフィラデルフィア郊外へ移住。ニューヨークの「ニューヨーク州立ファッション工科大学（Fashion Institute of Technology / FIT）」で学び、2014年の第1回「LVMH Graduate Prize」を受賞。その後、「セリーヌ（Céline）」のRTW（Ready to Wear）アトリエを経たのち、「デレク ラム（DEREK LAM）」で勤務。「ピーター・ドゥ」は世界中の名の知れた小売店で展開されており、「ネッタポルテ（Net-A-Porter）」、「モーダ・オペランディ（Moda Operandi）」、「バーグドルフ・グッドマン（Bergdorf Goodman）」、「ドーバー ストリート マーケット ギンザ（Dover Street Market Ginza）」 、「ドーバー ストリート マーケット ロンドン（Dover Street Market London）」、「ブーン・ザ・ショップ（Boon the Shop）」、「ジョイス（Joyce）」などが名を連ね、オンラインでも取り扱われている。

A Magazine Curated By：
『A Magazine Curated By』は、毎号ファッションデザイナーをゲストキュレーターとして招き、その世界観を探求するユニークなコンセプトマガジン。編集部とのコラボレーションにより、ゲストキュレーターが革新的である独自のコンテンツを通して、文化的な価値観や美学を表現する。各号では、人々と情熱、物語、感情、好奇心、自然さ、真正性という、デザイナーの理念を讃えている。ベルギー初のファッション雑誌を誇る本誌は、今最も影響を与えているファッションデザイナーの視点を親密に繰り広げており、国際的に高い評価を得てきた。

過去には、アレッサンドロ・ミケーレ、デルフィナ・デレトレズ、エックハウス ラッタ、アーデム、フランチェスコ・リッソ、ジャンバティスタ・ヴァ、グレース・ウェールズ・ボナー、ハイダー アッカーマン、高橋盾、キム・ジョーンズ、ルーシー＆ルーク・メイヤー、メゾン・マルタン・マルジェラ、ピエールパオロ・ピッチョーリ、プロエンザ・スクーラー、リカルド・ティッシ、シモーネ・ロシャ、スティーブ 現在では移民やン・ ジョーンズ 、トム・ブラウン、ヨウジヤマモトなどがキュレーションを務めた。

記事：デザイナーとともに革新を続ける『A Magazine Curated By』編集長ダン・サーリーの雑誌作り（THE FASHION POST）