EVIDENCE by Larry Sultan & Mike Mandel
アメリカ人フォトグラファー、ラリー・サルタン(Larry Sultan)とマイク・マンデル(Mike Mandel)の作品集。2024年版。
アメリカの郊外生活者をテーマとして研究し、ポルノ産業についてのシリーズ「The Valley」や、「Pictures From Home」といった名作を刊行しているラリー・サルタン。野球選手に扮した写真家達のポートレートを撮りトレーディングカード形式にした「The Baseball Photographer Trading Cards」、公共施設の壁面を使った作品など数多くのユニークな作品を手がけたマイク・マンデル。本書は、サンフランシスコ美術大学で同級生だった二人がタッグを組み1977年に初版が発行された往年の傑作「EVIDENCE」の再販版。一般企業、米国政府機関、教育機関、医療機関、研究所、警察、そしてNASA等合計200万もあるフォトアーカイブから、記録資料や事実に基づき作成された証書で使用された写真 – つまり、「evidence(証拠)」をピックアップした。そのアーカイブ元は、アメリカにある世界最大級の建設会社ベクテル・コーポレーションやロサンゼルス市警察、NASAの無人探査機等の研究開発・運用に携わるジェット推進研究所、アメリカ合衆国内務省、スタンフォード研究所(現SRIインターナショナル)など錚々たる顔ぶれである。その中から59枚を独自の解釈で選び元の文脈から切り離して編集、1977年に部数限定で出版した。コンセプチュアルかつクラシックでありながら独創的な優れた写真集の一つの形として長く確立し続けた本作は、サンドラ・フィリップス(Sandra Phillips / サンフランシスコ近代美術館名誉キュレーター)によるエッセイとオリジナル未収録の作品が新たに加わり2004年にD.A.Pより複製版として再発行。1977年版、2004年版が希少となった2017年、写真集を愛する読者にこの不朽の名作を手にして貰いたいという願いをもって、2004年のD.A.P.版が再版、そして2024年、さらに1977年のオリジナル版を踏襲し、以前用いていたカバーを外した装丁で改めて刊行された。
「この作品は、計り知れないミステリーを孕んだ視覚なぞなぞだ。(中略)この世でもっとも美しく濃密で難解な写真集の一つであり、終わりのないトリックボックスのようである。」-Martin Parr