フランス人アーティスト、フランソワ・モレレ（François Morellet）の作品集。2017年10月から2018年6月にニューヨークの「ディア・チェルシー（Dia Chelsea）」で開催された展覧会に伴い刊行された。体系的かつ厳格である実験にユーモアと遊び心を吹き込むことで知られる作者の多様な作品群を深く掘り下げた1冊。キネティック効果や光学効果へ関心を寄せた作者は、鑑賞者の知覚と参加を促す作品を生み出し、既定のシステムの中に偶然性を取り入れ、従来の芸術的才能が持つ因習へと挑んだ。

本書は、国際的に名高い美術史家やキュレーターらによる、作者に関する新たな研究を収録している。本書に掲載されているエッセイでは、作者の活動における概念、ブラジルの幾何学的抽象画やイスラムの装飾文化の影響、ユーモアの役割といったテーマを探っている。また、作者自身による未訳の著作群も多数収録。幾何学的な絵画、ネオン作品、建築へ介入した作品など、印象的な作品の新たな図版を収録した本書は、多面的であり魅力に溢れる作者の決定版となる作品集である。