DONALD JUDD: ARTWORK: 1980 by Donald Judd
アメリカ人アーティスト、ドナルド・ジャッド(Donald Judd)の作品集。本書はニューヨークの「Gagosian」での展覧会開催に伴い刊行された。1980年に制作された無題のインスタレーション作品の概略図とその写真を再現したものであり、あわせて関連作品の図版も本書には収録されている。本作はダグラス・ファーを材料としており、合板を使用した構造物としては作者が今まで制作してきた中で最も大きい。ニューヨークでは1981年に「Castelli Gallery」で本作のオリジナル版が展示されて以来、今回の展覧会が初めての公開となる。ギャラリーの奥の壁全体に広がるこの格子状に組まれた構造物は、幅80フィート(約24.4m)にもおよび、水平面と対角線を用いた面を特徴とする3つのパーツで構成されている。「壁面」と「床面」を融合させた本作は作者の光と空間に対する卓越した能力を証明するとも言え、「複雑な思考をシンプルに表現する」ということを実現したいという作者の思いが現れている。このほかに、耐候性鋼材を用いた作品(無題、1982年/ウェスタンワシントン大学所蔵)や、コンクリートを用いた作品(無題の作品 15点、1980〜1984年制作/チナティ財団常設)で大きなスケールの制作物を見せている。
アルミやアクリル板の仕様に加え、作者は1970年初頭より無塗装の合板を使用した作品の製作を始めた。このような、意味付けから開放された工業用メディアの中立性や、それを巧みに扱い組み合わせるという緻密な作業によって、堅実性と欠如を持ち合わせた遊び心やその相互作用に着目することができたのである。「Gagosian」で展覧された作品は、計算された比率と図的なバリエーションを重視する作者の姿勢を立証するものであり、「見る」という自己認識的な行為や、生の素材と飾り気のない形との関わり合いにその好奇心を寄せていた。
本書はグラフィックデザイナーのソニア・ダヤコヴァ(Sonya Dyakova)が主宰する「アトリエ・ダヤコヴァ(Atelier Dyakova)」が装丁を手がけ、段ボール素材を表紙に使用した製本が施されている。「Judd Foundation(ジャッド財団)」のディレクター、キュレーターであり、作者の息子であるフラヴィン・ジャッド(Flavin Judd)による序文をはじめ、美術史家のルディ・フックス(Rudi Fuchs)とマーサ・バスカーク(Martha Buskirk)によるエッセイ、編集家でありライターのマーゴット・ウィレット(Margot Willett)と美術史家のフリードリヒ・テヤ・バッハ(Friedrich Teja Bach)、キュレーターのカスパー・ケーニヒ(Kasper König)、美術史家のマーカス・ブリューデルリン(Markus Brüderlin)による作者へのインタビューを掲載。
「空間はアーティストや建築家によって作られる者であり、誰かに見つけられてパッケージ化されるものではない。思考によって生まれるのだ。」&mdash ドナルド・ジャッド
インタビュー ソニア・ダヤコヴァ 『Donald Judd, Artworks: 1970–1994』における制作プロセスとその理想形