OLD BERLIN POSTERS by Jonathan Monk [SPECIAL EDITION]
イギリス人アーティスト、ジョナサン・モンク(Jonathan Monk)による、書籍形式の作品。2023年9月から10月にベルリンの「einBuch.haus」で開催された展覧会に伴い刊行された。
作者は冗談や皮肉めいたアプローチでアプロプリエーション・アートと自身の経験に基づいた要素を組み合わせて作品を生み出している。本展でも、過去の展覧会や書籍作品をリファレンスとし、壁に展示するタイプの作品と、アーティストブックと両方の形で作品を見せている。
本プロジェクトは1992年に「Grazer Kunstverein」から刊行された、アーティストのマーティン・キッペンバーガー(Martin Kippenberger)による作品「OLD VIENNA POSTERS」を参照している。キッペンバーガーのそれは、ポスターが多数貼られているボードのイメージを印刷してA4のページ構成になるよう切り分けられ、それを製本した本の形で構成されている。元々はグラーツで展示されていた作品であり、広告ポスターが貼られたウィーンのバーの様子が描かれている。
本書では、作者は自身のドイツ映画のポスターコレクションを使い、キッペンバーガーの「Dear Painter, Paint for Me」シリーズ(1981年)とも直接的な関係を持たせている。「Dear Painter, Paint for Me」シリーズのためにキッペンバーガーは、当時無名だった映画ポスター画家のヴェルナー(Werner)なる人物に写真の絵を描かせた。作者はこのことを機に、ベルリンにある映画ポスターのギャラリーを訪問し、1979年から1981年の間の映画ポスターをその時に入手可能だった範囲ですべて蒐集した。作者によって購入された18点のポスターはベルリンの映画館用にヴェルナーによって描かれたものであるかもしれず、結果キッペンバーガーのプロジェクトと間接的に繋がっていることとなる。
作者はキッペンバーガーのコンセプトをアプロプリエートし、ポスターを利用して本を作り、一部屋分の大きさの壁型インスタレーション作品を展示した。このように作者はそのパフォーマンス的な探求によって、「展示の形をとった本」という展示コンセプトの、胸が踊るような続きをみせてくれているのである。
本書の表紙には「Caribic - FSC®」紙のレモンイエローを使用、シルクスクリーンで刷られている。中身はブルーバックペーパーを用いてデジタルプリントでイメージが印刷されており、ポスターのイメージを拡大し分割した画像で構成されている。この展示で作者は、「展覧会の形をした本」を実現させている。
展覧会で飾られたイメージを分割したポスターはこちら。