アメリカ人アーティスト、ジェニー・ホルツァー（Jenny Holzer）の作品集。2024年5月から9月まで「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館（Solomon R. Guggenheim Museum）」で開催された展覧会に伴い刊行された。本展覧会は、1989年に同美術館で開催され画期的と評されたインスタレーション作品を再構築したものである。建築家フランク・ロイド・ライト（Frank Lloyd Wright）が設計したドーム状の建物の6つのスロープを進み建物の頂上まですべて登りきるサイト・スペシフィックな作品は、「Truisms」や「Inflammatory Essays」など、代表的なシリーズから抜粋したテキストがスロープに沿ったディスプレイ上を流れていき、建築の様相を変貌させた。

本書では、各ページに作者の3つのテキスト作品シリーズ「Truisms」、「Living」、「Survival」から選んだフレーズが使用されている。そのフレーズは、作者が長年携わり、自身の代表作でもある石のベンチに文字を彫った作品に使用されるドローイングの形式が用いられている。本文の紙は全て半透明の羊皮紙が使われており、物理的かつ概念的なレイヤー状に構成されることで、透けて見える文字を通して作者の作品を小説的に読むことを読者に誘う。「現実の作品」と「想像上の作品」を形にして見せ、ページを通じて新たな関連性を紡ぐことで、作者の実践を拡張しているのである。