アメリカ人アーティスト、ジャック・ウィッテン（Jack Whitten）の作品集。ジェスチュラル・ペインティングから脱却した1970年代の先駆的なシリーズを紹介する一冊であり、作者の絵画シリーズ『Greek Alphabet』を深く探る初めての刊行物。本書では抽象的に変異するモノクロームの作品群とマークメイキングの実験的作品で構成されたこの注目すべきシリーズを分析する。

この作品群には、くしや刻印、フロッタージュなど、手製の道具を用いた手法が用いられている。あわせて、シリーズに光明を投じた美術史家のコートニー・J・マーティン（Courtney J. Martin）や「ディア芸術財団（Dia Art Foundation）」のキュレーターである、ドナ・デ・サルボ（Donna De Salvo）とマティルデ・グイデッリ＝グイディ（Matilde Guidelli-Guidi）によるエッセイ、作家のフレッド・モーテン（Fred Moten）とグレッグ・ボルドウィッツ（Gregg Bordowitz）による作者の芸術、人生、そして文化的重要性に対する詩的な省察と共に、作者のアーカイブからセレクトされた私的な文章などの資料が補足として本書に収められている。

本書に収録された作品のうち、作者の生前に展示される機会を得られたものはほんの一握りにすぎない。40ものカラー図版で60点以上もの絵画作品が掲載されており、これほどの数の作品群をひとつにまとめて出版した今までにない一冊に仕上げられ、作者の手法の形式的かつ本質的な組み合わせをより深く理解することができる。

編集はドナ・デ・サルボ、マティルデ・グイデッリ＝グイディとディアドラ・オドワイヤー（Deirdre O'Dwyer）、序文はジェシカ・モーガン（Jessica Morgan）、テキストはグレッグ・ボルドウィッツ、ドナ・デ・サルボ、マティルデ・グイデッリ＝グイディ、コートニー・J・マーティン、フレッド・モーテンが手がける。