TIME AND MORE, SPACE AND MORE... by David Hockney
イギリス人アーティスト、デイヴィッド・ホックニー(David Hockney)の作品集。本書は2018年9月から11月にシカゴの「リチャード・グレイ(Richard Gray Gallery)」内のスペースの一つ「グレイ・ウェアハウス(Gray Warehouse)」で開催された展覧会に伴い刊行、1980年代初頭から展覧会開催当時までの作品を網羅した一作である。映像や写真、アニメーションなどに焦点を当てた「レンズ・ベース(lens-based)」のメディアに関心を持ち制作に取り組んできた記録がまとめられている。イギリス人ヴィジュアルアーティストのタシタ・ディーン(Tacita Dean)による序文、シカゴを拠点とする作家であり美術史家のアーサー・コラット(Arthur Kolat)によるエッセイを収録。
本展は作者にとって「リチャード・グレイ」で開催する10回目の個展であり、「グレイ・ウェアハウス」では初めての展覧会となる。近年の映像作品と写真作品を同時に展示した機会となり、2017年に「ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター(Centre national d’art et de culture Georges Pompidou (CNAC-GP)、以下ポンピドゥー・センター)」、「テート・ブリテン(Tate Britain)」にて展覧されたマルチパート・ビデオインスタレーション作品『The Four Seasons, Woldgate Woods, 2010-2011』が会場での展開の中心となった。
9チャンネルのビデオ作品4点が壁に掛けられ、まるでコンパスの4方位のように空間内に配置、構成された。イングランド、ヨークシャーの田舎の並木道を眺めるように景色を描き、4つのそれぞれが四季の一つ一つをはっきりととらえている。このビデオインスタレーションからは、時間と視点を乗算的に増殖させる作者の感覚の機敏さがありありと伝わってくる。この技術は1980年代にポラロイド写真の撮影で磨いたものである。コラット曰く、「(...)多数の連続的に繋がった瞬間瞬間を含有していた以前のフォト・コラージュとは異なり、この『Four Seasons』は、"連続した時間"と"同時に存在する時間"のどちらも取り込まれている。」
また、作者は、不可能であると思われる視覚的空間を作り出すためにカメラを用いる。このテーマは、作者がさまざまなメデイアを通じて実践し、貫いてきたことである。多角的で広い視点を通して見る万華鏡のような体験を再現すべく、「フォト・ドローイング」作品を用いて自身のロサンゼルスのスタジオを描き、パノラマ的な時間と空間の感覚を描き伝えようとしている。先述の映像作品と同様、この大型の「フォト・ドローイング」作品は、自身が写真的かつ技術的なプロセスを革新し続けることで生まれた一作である。
EXHIBITION:
デイヴィッド・ホックニー展
会期:2023年7月15日(土)- 11月5日(日)
休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
時間:10:00-18:00
開催場所:東京都現代美術館 企画展示室 1F/3F
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