ARK JOURNAL VOLUME VIII AUTUMN/WINTER 2022
スカンジナビア発、年二回刊行のインテリア雑誌『ARK JOURNAL』の第8号。世界中の美しい住居とそこに住む人々の物語は、空間がただ美しい家具やアートを置くこと以上に哲学やパーソナリティの表現であることがわかる。2019年にデンマークの有名インテリア雑誌のエディター、スタイリストを長年勤めるメッテ・バーフォード(Mette Barfod)が創刊した本誌は「私たちの周りの空間、そこに置くオブジェクト、そのオブジェクトの作り手」をテーマにしている。建築、デザイン、アートの相互作用にスカンジナビアの価値観や美学を通してフォーカスする。毎号4種類の表紙が用意されている。
本号は、より流動的、全体的な思考をするための手段と創造について考察している。パリを拠点に活動する「アルパスタジオ(Arpa Studio)」を主宰し、スキンケアブランド「イソップ(Aesop)」のフレグランスも手掛けるフランス人調香師のバーナベ・フィリオン(Barnabé Fillion)を訪ね、自身の共感覚にインスピレーションを受けて香りを目に見えない風景として視覚化した作品を紹介している。ニューヨークでは、流動的な瞑想活動として絵画を探究し制作するアメリカ人アーティストのランドン・メッツ(Landon Metz)が、本号のために作品を寄稿した。さらに、ニューヨークを拠点とする写真家のマーティン・モルダー(Martien Mulder)の個人的な回顧録を収録。ミニマリストである氏の作品群は、冷静ながら温かみがあり、自身の旅や活動、人生を映し出した親しみやすいものである。
ロサンゼルス、北イタリアの小都市、コペンハーゲンからブリュッセルまで、本号で特集されている邸宅は、特定の場所や文化、またその住宅が在る周囲の環境との関わり方について新たな視点を与えてくれる。例えば、イギリス人建築家のジョン・ポーソン(John Pawson)がアメリカのテキスタイル会社「マハラム(Maharam)」のCEOを務めるマイケル・マハラム(Michael Maharam)のために建築した住宅は、山間部の敷地に石材のみを用いて作られ、その住み心地のよいミニマリズムは、自然、建築、居住者の間に対話を作り出す。同様に、スイスの建築事務所「ディナー&ディナー(Diener&Diener)」を主宰するデンマーク人建築家のテレーズ・エルンガード(Terese Erngaard)がデンマーク人実業家のキム・ラフベック・ハンセン(Kim Rahbek Hansen)のためにデンマーク南部のファルスター島に設計したサマーハウスは、いかにして陸と海の間の境界線に適切なスペースを見つけるかを美しく伝えるものである。フィンランド人建築家のトゥオマス・トイヴォネン(Tuomas Toivonen)と日本人デザイナーのネネ・ツボイ(Nene Tsuboi)がヘルシンキに作りあげ自らが管理するサウナは、瞑想的でありながらコミュニティのための空間としても機能するものであり、プライベートとパブリック・ライフの間を行き来するスペースである。
多様な創造性、言語、出自をもつ人々が一堂に会した本号は、領域を横断して活動するデザイナーのラフ・シモンズ(Raf Simons)とイタリア人キュレーター、デザインディレクターのマルコ・サンミケーリ(Marco Sammicheli)の対談も収録。さらに、ベルギー人デザイナーのアン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)がパートナーで写真家のパトリック・ロビン(Patrick Robyn)と共に自身の40年にわたるキャリアについて語り、ファッション、アート、デザインの架け橋となった活動について考察している。
掲載作家: バーナベ・フィリオン(調香師)、ランドン・メッツ(アーティスト)、マーティン・モルダー(写真家)、ジョン・ポーソン(建築家)、テレーズ・エルンガード(建築家、Diener & Diener)、トゥオマス・トイヴォネン(建築家)、坪井ネネ(デザイナー)、ラフ・シモンズ(デザイナー)、マルコ・サンミケーリ(キュレーター、デザインディレクター)、 アン・ドゥムルメステール(デザイナー)、パトリック・ロビン(写真家)
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