UMEGAOKA ELEGY by Nobuyoshi Araki
日本人写真家、荒木経惟の作品集。2019年にタカ・イシイギャラリーで開催された展覧会「Umegaoka Elegy(梅ヶ丘墓情)」に伴い刊行された。
以下プレスリリースより
1994年のギャラリー開廊以来、四半世紀にわたりほぼ毎年開催された荒木の個展は、今年27回目を数えます。本展では、中判フィルムにて撮影したカラー、モノクローム写真の新作約90点を発表いたします。荒木の作品には「東京ヌード」(1989年)、「東京物語」(1989年)、「東京コメディ」(1997年)など、自身の生まれ育った「東京」を冠するものが多く存在しますが、今回の展示作品のタイトルに荒木は現在居を構える「梅ヶ丘」を選びました。梅ヶ丘の自宅内とその周辺で撮影された作品群の被写体は、人形、像や怪獣のオブジェ、花、モノクロームの空が大半を占めますが、リズムを刻むように妻陽子や今年95歳のロバート・フランクの写真、今は亡き父と母、夭折した二人の兄の没年を記したメモが挿入されます。昭和から平成への改元時や2000年の世紀の変わり目など、荒木はその時代を謳歌した女性達、当時の出来事、変わりゆく街並みをカメラによって「複写」することで、時代の節目の世相を作品にまとめて来ました。元号が「令和」に改まる今年、荒木の関心は自分自身にあります。体力が日増しに衰え、外出を控えることの多くなった荒木は、自らに忍び寄る死を意識しています。父、母、そして妻陽子、愛猫チロの死を、被写体として写真に収めることで看取って来た荒木のレンズは、自身へと向かいます。撮りたいものや撮る習慣になっているものを淡々と写す日々――ありのままに提示される写真の堆積を前に、その解釈は見る者に委ねられています。すべてを受け入れるカメラと化した今年79歳を迎える写真家の最新作を是非この機会にご高覧ください。