アメリカ人アーティスト、ジミー・デ・サナ（Jimmy DeSana）の作品集。本書は、1988年にニューヨークの「パット・ハーン・ギャラリー（Pat Hearn Gallery）」で開催された個展に伴い制作された冊子の複製・再現版である。イメージと詩を収録したささやかな一冊であり、本展覧会は、作者にとって最後のシリーズである『Salvation』を定義づけることとなった抽象写真作品を紹介したことで評判が広がった。

収録されている18篇の詩は喪失や未知なるものに触れており、集大成の一作である『Salvation』のテーマに通じるところがありながらも、より幅広い感情の在り方を許容する形而上学的、格言的、時に不条理主義的な性質を帯びている。聖アウレリウス・アウグスティヌス（St. Augustine）、ニーチェ（Nietzsche）、ピカソ（Picasso）の引用で締めくくられ、作者の詩がラベルのように扱われているが、曖昧で解釈の余地を残す構成は普遍的な空気を醸し出し、豊かなニュアンスと独特な雰囲気を存分に備えた作者の内的・外的な世界を読み解くことができる。詩に伴って展示を飾る写真のうちの3点を収録したが、その写真のように、本書は表現の明晰な解釈を避け、代わりに抽象的で断片的な自己を映し出す。作者が冒頭で述べるように「魂の一部は、魂の全てと同等なのだ」。