A SHIMMER OF POSSIBILITY by Paul Graham [SIGNED]
イギリス人フォトグラファー、ポール・グラハム(Paul Graham)の作品集。21世紀の写真集を語る上で欠くことのできない名作として高く評価され、「Paris Photo–Aperture Foundation PhotoBook Awards」が設立された2012年には、過去15年間に出版された中で最も重要な写真集に与えられる賞を獲得している。「SteidlMACK」から2007年に刊行された初版は、発売から僅か10週間で完売、以来長らく絶版となっていたが、初版刊行から10年を記念し、カバーの色を一新する形で復刊された。本作は12冊の写真集で1つの作品として成し、それぞれが現代アメリカの日常を綴った一つの短い物語が纏められた1冊となっている。ラスベガスでバスを待ちながら煙草を吸っている男性、緑豊かなニューイングランドで郵便受けから自分宛ての郵便物を取り出している女性。イメージが織りなすシークエンスの数々は決して多くを語ることはないが、人生の盛衰を詩的に写し出している。こうした静かな物語は、突如として荘厳なものに昇華される場面がある。例えば、一人の男が一面に広がる芝生を刈っているシーンでは、雲の切れ間から差し込んできた太陽によって、きらきらと輝く雨の粒が光のカーテンのように浮かび上がる。写真には通常はっきりとした意味が込められているものだが、ここに収められたイメージは映画的かつ俳句的要素を孕んでおり、一線を画している。作者は、世界の一部を切り取り1つの完璧なイメージとして小さくまとめ上げるということはせずに、ありふれた生活の内に時折訪れる、誰に顧みられることもない出来事の豊かさを語るのである。本シリーズを構成するこの12冊は、それぞれ同じサイズではあるものの、ページ数は各々異なり、写真一枚だけで完結する1冊もあれば、ある交差点で撮影したイメージを60ページに渡って構成したものまで種々様々である。作者は人生に対し、変えることができない終着点や結論を与えるのではなく、浮き沈みのある流れとして肯定する。そこでは特筆すべきことが起きておらず、かといって何かが否定されているわけでもなく、全てが可能性というかすかな光(shimmers with possibility)を帯びて輝いている。この「A SHIMMER OF POSSIBILITY」が織りなす先鋭的なフォーマットは、作者特有の本質を見事に生かしたものとなっている。
「『 A SHIMMER OF POSSIBILITY』の初版が誕生した時、ポール・グラハムは写真集というものの定義を鮮やかに塗り替えた。アメリカを横断する叙事詩のような旅を経て、一つ一つが異なる 12冊が生み出された。(…)今回 MACKから再版された新装版でも、そうした旅の途中で体験したつかの間の出逢いが、私達の胸を揺さぶり好奇心をかき立てる。」
― レベッカ・ベンガル(ライター)Bookforum
「手にした者は皆、この 12冊セットの『 A SHIMMER OF POSSIBILITY』が実に稀有な作品集であることを目の当たりにするだろう。ページ数は多くはないが、その一冊一冊にアメリカのあちこちを舞台としたユニークな物語が収められている。そこにはそれぞれの人生の一コマを垣間見ることはできるが、それ以上は何も語られていない。デザインとシークエンスが秀逸であり、その点によって本書は写真集の歴史に優れた足跡を残すこととなった。」
ー キャシディ・ポール(写真家、ライター)「The Best Photobooks About America」TIME.com
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※書籍本体には影響ございません。