OFF GRID by Sheila Hicks
アメリカ人テキスタイルアーティスト、シェイラ・ヒックス(Sheila Hicks)の作品集。本書は、2022年4月から9月にかけてイギリスの西ヨークシャー州にある美術館「ヘップワース・ウェイクフィールド(Hepworth Wakefield)」で開催された展覧会に伴い刊行された。この展覧会では、繊維やテキスタイルを扱う代表的なアーティストの一人である作者の初の大規模回顧展を記念し、1950年代に制作された初期の作品から、イギリス人建築家、デイビッド・チッパーフィールド(David Chipperfield)が設計した「ヘップワース・ウェイクフィールド」の建築やイギリス人造園家のトム・スチュワート・スミス(Tom Stuart-Smith)が手がけた庭園に対応したサイトスペシフィックなインスタレーション作品まで、70点以上の作品が展示された。
本展では、アート、建築、デザインの境界線に向かい常に挑戦し続ける作者の作品における、素材、フォルム、プロセスの多様性を探求する。それは、作者が人生と創作活動の中で、慣習や伝統に背き、反抗的に独自の道を歩んできた様々な手法を思い起こさせる。また、作者が織物の形を探求し始めたときに挑戦した、織物そのもののグリッドを想起させる。世界中を旅しながら活動をし、テキスタイルの知識を深め、自身の作品に革新をもたらした、作者のじっとしていられない性分や好奇心も暗示している。
本書は、「ヘップワース・ウェイクフィールド」のチーフ・キュレーターを務めるアンドリュー・ボナチーナ(Andrew Bonacina)、同館のアシスタント・キュレーターを務めるアビー・シャピロ(Abi Shapiro)、コートールド美術研究所の美術史教授であるジョー・アップリン(Jo Applin)、アートライター兼美術批評家のジェニファー・ヒッギー(Jennifer Higgie)、チャールズ・ダーウェント(Charles Darwent)によるエッセイのほか、作者とデイビッド・チッパーフィールドによる対談も収録。また、展示作品の図版、展示風景写真、作者のスケッチブックや写真など豊富なアーカイブ資料も掲載されている。