AFTERLIFE by Vasantha Yogananthan [SIGNED]
マグナムが主催する「30 UNDER 30」(30歳以下の写真家30選)に選ばれたフランス人フォトグラファーであり「CHOSE COMMUNE」の共同設立者でもある、ヴァサンタ・ヨガナンタン(Vasantha Yogananthan)の作品集。本書は、紀元前300年頃にサンスクリットの詩人ヴァールミーキによって記録された全7章からなるヒンドゥー教の聖典であり古代インドの大長編叙事詩『ラーマーヤナ』を現代的に再話、各章ごとに1冊ずつ写真集化する長期プロジェクト『A Myth of Two Souls』の第6章として制作された。作者は、2013年よりインドを北から南へと旅をしながら『ラーマーヤナ』の道筋を辿り、現地の人々と生活を共にする中で見られる『ラーマーヤナ』の影響をインスピレーションに撮影を敢行。鮮やかな色に仕上げた写真だけでなく、イラストレーションなどの表現、土地固有のイメージを織り交ぜそれぞれ点在させることで、時代を超えたこのストーリーの層を成す一冊を巧みに編み込む。このような演出により敢えてフィクションと現実との境界線を曖昧にした作品に仕上げている。第6章は魔王ラーヴァナとラーマ王子の軍隊との間の血なまぐさい戦いを中心に展開する。タイトルからも分かるように、テーマは死と輪廻転生である。ラーマ王子の残酷さがとうとう明るみに出た本章は、一人の男が魂の闇に堕ちていく様子を視覚的に描いているとも捉えられる。撮影は、悪に対する善の勝利を祝うインドのお祭り「ダシェラ」の開催期間中、2回にわたってラジャスタン州とタミルナドゥ州で行われたが、にぎやかな祭りの様子はどこにも写っていない。祭りの行われる一週間の間は肉体から離れて別の誰かになることが許されているとでもいうように、人々は毎晩のようにトランス状態に入ろうとするが、この作品の焦点はそこにある。作者は撮影後、スタジオに戻り何枚もの写真を組み合わせ、見ていると何がなんだか分からなくなってくるようなコラージュを作った。いつの時代もラーマーヤナは書き換えられ、再解釈され続けてきたが、この作品ではインドの作家ミーナ・カンダサミー(Meena Kandasamy)が再解釈を行っている。2013年より続いてきた本プロジェクトは、2021年刊行予定の最終第7章『AMMA』によって幕を閉じる。
記事:ヴァサンタ・ヨガナンタン インタヴュー
ドキュメンタリーとしての現代版ラーマーヤナ「A Myth of Two Souls」(IMA ONLINE)