MYSTERY STREET by Vasantha Yogananthan [FIRST EDITION / SIGNED]
マグナムが主催する「30 UNDER 30」という、30歳以下の写真家30選にも選ばれたフランス人アーティストであり「CHOSE COMMUNE」の共同設立者でもある、ヴァサンタ・ヨガナンタン(Vasantha Yogananthan)の作品集。本作は子どもたちに始まり、子どもたちで終わる。子供が遊び、キラキラと笑い、空想にふけり、そして、そうなっていく。初めての北アメリカのシリーズにおいて、作者は若者の隣に立ち、視線を同じに合わせてものを見ている。
本プロジェクトで、作者はドキュメンタリー写真へと回帰しながらも規範に捉われず、伝統の枠を越えていく。本作は現実との対話であり、多様な物語の可能性への逃避でもある。作者が好むジャンルであるポートレートを主として構成されているが、ニューオーリンズの包括的な肖像を描こうと意図しているわけではない。
ルイジアナの灼熱の太陽の下を舞台とし、寓話として横道に逸れながらも現実について何かを語る。人間の習性に対する意見でもあり、ありふれたものが変容した姿でもある。
名残惜しい夏の欠片を写した本書では、形づけられることがいかに大きな重みを持つかを示し、空間・時間・場所などの情報は最小限のみ与える。必要以上の断定を避け、止めさせるため、作者は鑑賞者にそれぞれが思いのままに観ることを誘う。本書は作者の活動のターニングポイントとして、親族関係や、身体と環境が交わることに配慮をこめた視線を向けている。
本プロジェクトは2023年5月から9月までパリの「アンリ・カルティエ・ブレッソン財団(Henri Cartier-Bresson Foundation)」、2023年9月から2024年1月までニューヨークの「国際写真センター(International Center of Photography / ICP)」で展覧されている。両者の協力のもと、「エルメス財団(Fondation d’entreprise Hermès)」のフランスとアメリカにおけるフォトグラフィー・コミッション「Immersion」の一環として刊行された。