LES TABLES DE MAÏA ET PIERRE PAULIN
フランス人インテリアデザイナー、ピエール・ポラン(Pierre Paulin)とその妻マイア・ポラン(Maïa Paulin)の作品集。2024年10月から12月までパリの「Paulin, Paulin Paulin」で開催された展覧会に伴い刊行された。本展では、1950年代から1990年代までの作品が幅広く紹介されている。
「リボンチェア(Ribbon Chair)」、モジュールソファ「デューン(Dune)」、ジョルジュ・ポンピドゥー大統領時代のエリゼ宮内にある大統領私邸の応接室「エリゼ・サロン(Élysée Salon)」などを筆頭とした代表的なデザインモデルを通じて、その時代を象徴する先見性の高い仕事を成した作者を紹介する必要は最早ないかもしれないが、妻であり共同経営者であったマイアの役割は注目すべきものである。対照的でありながらも補完し合う個性の同居による協力関係は、夫婦の歩んだ旅に不可欠であった。ピエールが身体にフィットするような独創的で座り心地の良いシートを創る一方で、マイアは人間関係の面で物事を「和らげ」、時に美味しい食事を囲みながら出会いを友好的に築き、仕事の機会を創造した。
仕事机から食卓へ、あるいはその逆へ。この2つの柱が常にポーラン家の日常を構成していた。コーヒーテーブル、机の引き出しを外して作ったダイニングテーブル、彫刻的なもの、素朴なもの、はたまた高級木材で作られたもの。テーブルには、需要に基づいたピエールの旅路が強く刻まれているが、同時に自身の個人的な進化でもあり、「カテドラルテーブル(Cathédrale)」、モジュール式シェルフ「エリゼ(Elysée)」、コーヒーテーブル「ロザース(Rosace)」のような伝説的なデザインが誕生した。ピエールとマイアのテーブルは、描かれたものであれ、セットされたものであれ、星型であれ、カジュアルなものであれ、いずれも人々を集めて繋がりを生み出すために作られ、コミュニティの感覚を育んだ。そのひとつひとつが、どの者へも共通して向けられた配慮、実行に伴う厳格さ、それでいて磨き過ぎることへの拒絶、そして職人技の本質的な知見を物語る。
本書は、ポーラン夫妻の親密な肖像を描く。マイヤのレシピや夫妻が企画したディナーの写真が、ピエールのスケッチや作品の写真と絡み合い、二人の人生の道筋と創作の道程が、創作といかに切り離せないものであったかをさりげなく強調する。
本書は、デザインやインテリアの愛好家だけでなく、ライフスタイルや食に関心のある者へも響く一冊であろう。カバーはポスターとしても楽しめる仕様となっている。