ANOTHER LOVE STORY by Karla Hiraldo Voleau
フランス系ドミニカ人フォトグラファー、カルラ・ヒラルド=ヴォロー(Karla Hiraldo Voleau)の作品集。「Photo Elysée」のディレクター、ナタリー・ヘルシュドルファー(Nathalie Herschdorfer)により、「Best Photography Books of 2023」に選出されている。
「1年。カーラ・ヒラルド=ヴォロー(KHV)の展覧会Another Love Storyが2022年にパリのMEPで開かれてから1年が経った。この1年は、このプロジェクトで描かれた物語の期間と重なっている。恋人Xが二重生活を送っていることが判明した途端に、クライマックスから終わりへと突然シフトするこのラブストーリーは、KHVにとって特別な意味を持つ。
もしも現実が虚構なら、フィクションこそ救いなのかもしれない。KHVは、自分自身の物語を再演することによって取り戻し、カップル成立のメカニズムを浮き彫りにする。衣装、場所、イメージの構成は、コールシートを参照し、同じ衣装を複数購入するなど、どれも綿密な計画から生まれたものだ。 写真、パフォーマンス、文章を組み合わせた彼女の作品は、現実と虚構、個人と集団の境界を曖昧にする。このパフォーマンスを通して、KHVは被写体としての自分を主張し、彼女自身の歴史の力を取り戻したのである」
作者の作品は、批評的空間としての親密さに焦点を当てている。写真を通じてジェンダー、セクシュアリティ、感情、身体などのテーマを探求し、見た目を超えたところで繰り広げられている物語を明らかにする。また、芸術的なプロジェクトに自分自身を登場させることで、自伝的な物語とフィクションを融合している。写真という表現手段をフィクションの道具として考察し、愛という感情のミザンセーヌを考案することで、カップルを定義しているはずの規範や社会的評価が私たちの中でしばしば無意識のうちに再生産されていることを示している。