ARGUESKE 1994-1997 by Davide Sorrenti [THIRD EDITION]
イタリア人ファッションフォトグラファー、ダヴィデ・ソレンティ(Davide Sorrenti)の作品集。本書は作者による初のモノグラフであり、IDEAから出版された『Polaroids』(2020年)、『MY BEUTYFULL LYFE』(2021年)に並ぶ一冊である。初版は即完売、小部数で第2版が発行されたため厳密には第3版となる本書は、2019年にニューヨークの文化センター「CP Project」にて開催された展覧会「Our Beutyfull Future」に伴い刊行された初版と同様の仕様で再版されている。
イタリアの写真家一家に生まれ、1990年代のニューヨークで活動した作者は、仲間と共に「SKE(See Know Evil)」を結成し街中にタギング(※註1)を展開した。アメリカ人女優のジェイミー・キング(Jamie King)と交際していたことでも知られ、本書にも作者によるキングのポートレートが収録されている。ヘロイン・シック(※註2)とも表現され得るポートレートだが、むしろ1990年代のニューヨークにおける恋愛事情を象徴する視覚的な記録として理解されるべきである。2018年にドキュメンタリー映画「See Know Evil」、2019年に展覧会「Our Beutyfull Future」で取り上げられた作者とその作品群は、この時代を体現した存在であると言える。
作者の母親、フランチェスカ・ソレンティ(Francesca Sorrenti)が編集とデザインを手がけ、どのページも豪快なスタイルで、ハイファッションとストリートの衝突、雑誌のページのスクラップ、フォトブースで撮影された写真、拇印付きのオリジナルプリント、混沌としたコラージュで記録された日々の生活、スケッチブックに描かれた落書きやドローイング、コンタクトシートなどから、1990年代のニューヨークから溢れる抑えがたいエネルギーを感じることができる。作者は、わずか数年のキャリアの間に驚くべき優れた作品を作り上げ、若干20歳でこの世を去った。90年代の終わりを見届けられなかった作者による、90年代を描いた一冊である。
この本を、その人生とクリエイティビティでいつまでも私を驚嘆させ続ける息子ダヴィデと、愛する家族、そして「SKE(See Know Evil)のクルーに捧げます。」ーフランチェスカ・ソレンティ
※註1 街のあちこちに見られるスプレーペンキで描かれた落書きの一種で、個人や集団の目印とされるものを描いて回る行為・またはそれによって描かれたものを指す。
※註2 1990年代初期のファッションで人気を博したスタイルで、痩せた体つきで目の下にクマのある顔色が青白い女性を表す用語。