CHRYSSA & NEW YORK by Chryssa Vardea-Mavromichali
ギリシャ生まれのアメリカ人アーティスト、クリッサ(Chryssa)の作品集。「ディア芸術財団(Dia Art Foundation)」と「メニル・コレクション(Menil Collection)」が共同企画し、2023年3月にニューヨークの「ディア・チェルシー(Dia Chelsea)」、同年9月にテキサス州・ヒューストンの「メニル・コレクション(Menil Collection)」、2024年5月にシカゴのギャラリー「ライトウッド(Wrightwood) 659」で開催される巡回展覧会に伴い刊行された。本展は1982年以来、米国で初めて開催される作者の大規模展覧会となり、この機会のために修復され、普段は見ることのできなかった数十点のネオン彫刻をはじめ、石膏、大理石、鋳物、キャンバスなどを用いた作品や紙を用いた作品が展示された。
作者は、看板、テキスト、ネオン管などを使用し、第二次世界大戦後のニューヨークのアートシーンを牽引するアーティストの一人であったが、ポップ、コンセプチュアル、ミニマリズムの芸術制作のアプローチをつなぐ作者の実践は、未だあまり認識されていない。本書は、作者の初期の創作活動、特に1950年代から1970年代にかけてニューヨークで過ごした時期に焦点を当てている。作者の独特な美学、特にネオン管を用いた形式的なものへの革新の誕生を辿り、その頂点にある、滅多に見ることができないとされる大規模なインスタレーション作品「The Gates to Times Square」(1964〜66年)の発展に至る。本書に収録されているエッセイでは、1950年代から60年代にかけてニューヨークを拠点に活躍した他のアーティストたちとともに作者の芸術を位置づけ、クィア理論やギリシャのディアスポラの眼差しを通して作者の作品を考察し、今日のライト・アートへいかにして重要な影響を与えたかが明らかにされる。さらに、作者の実践の中の技術的な側面に関する対談や、包括的な年表も掲載。本書は今後数年間、作者に関する決定的な一冊となるであろう。